天生薬/漢方薬の分野において、免疫賦活の概念は古くから取り入れられているが、当該分野で語られる免疫賦活/増強作用には、その物質的・科学的根拠が乏しく、関連する研究のほとんどは多糖類に注目したものである。そこで、本研究では、免疫賦活作用といった視点から活性天然物を見出すことを目的として、315種類の生薬エキスについて検討し、この中で明瞭な活性を示したSambucus sieboldianaについて活性成分の単離を試み、活性成分の部分精製と、その成分の免疫賦活作用について検討した。 免疫賦活作用の評価系としては、T細胞の反応系として植物レクチンであるコンカナバリン A (Con A)によるマウスリンパ球の増殖反応を用い、市販の刻み生薬ニワトコから、活性物質の純度が80%以上と推定される画分SSFを4.4 mg得た。各種構造解析から活性物質は、ベンゼン環を有する糖脂質の関連化合物であると推定された。 SSFは、脾臓細胞におけるConAによるリンパ球幼若化反応を顕著に増強した。ConAはT細胞系に作用するレクチンであることから、CD4およびCD8陽性細胞のについて、フローサイトメーターを用いて解析したが、SSFはいずれの細胞群の比率にも有意な影響は認められなかった。一方、ConA刺激時に、B220陽性細胞の比率は有意に増加した。B220 はB細胞系列のマーカーであることから、B細胞系の刺激物としてLPSを用い、LPSによる増殖刺激に対するSSFの作用を検討した結果、この際にも有意なB220陽性細胞比率の増加が認められた。 本研究の結果からSSFは主にB細胞系の増殖を特異的に増強することが示唆された。ニワトコ由来SSFは、これまでに報告の無い免疫賦活作用を持つことが期待され、今後さらなるSSFの精製と構造の決定、ならびに免疫賦活作用の詳細について検討が必要である。
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