研究実績の概要 |
抗生物質テトラサイクリン類(TCs)の新規類縁体の生合成酵素利用による創出を目指し、TCs同様、芳香族ポリケタイドに分類されるアクチノロジン(ACT)の生合成酵素の機能研究を展開した。平成29年度は、二成分系フラビン依存型モノオキシゲナーゼとして機能するActVA-5/ActVBが、生合成中間体DDHKの6, 8位の2か所を連続水酸化するin vitro assay系の構築に成功した。平成30年度は、ActVA-5/ActVBの前段階で立体特異的エノイル還元酵素として機能するActVI-2について異種発現系及びassay系の構築に成功、生合成中間体(S)-DNPAを基質とし、DDHKを生成することをin vitroでも証明できた。 令和元年度は、ActVA-5/ActVB を更に詳細に解析し、第一段階の6位水酸化が進行した後、中間生成物DHKは酸素添加酵素ActVA-5から排出され、別のActVA-5分子で8位水酸化が起こることを明らかにした。また、ActVI-2の基質(S)-DNPAが、エノイル還元及び6, 8位水酸化の三反応が一気進行することを期待しActVI-2/ActVA-5/ActVBの複合assay系の構築を検討したところ、エノイル還元及び6位の水酸化の二反応は進行したが、8位水酸化が進行しなかった。DHKのActVA-5への取り込みが阻害されたと考えられ、反応条件の最適化が課題となった。並行して、ActVA-5/ActVBによるTCsの構造変換を検討したが、ActVA-5の基質特異性が高いため実現せず、基質結合部位周辺のアミノ酸置換が必要と判明した。 本研究開始以前に中間体(S)-DNPAの生合成に必要な酵素全てについて、発現系およびassay系の構築を完了している。ActVI-2/ActVA-5/ActVBのassay条件に改善の余地があるとはいえ、本研究の成果によりACT生合成のin vitroでの完全再現は目前となり、酵素改変による新規抗生物質創出の自由度が飛躍的に高まると期待される。
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