研究課題/領域番号 |
17K08351
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
小山 清隆 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20225593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋由来真菌 / 抗アルツハイマー / アミロイドベータ凝集 / Th-T法 / SC2051 |
研究実績の概要 |
我が国は、高齢者の増加に伴い、痴呆症の数が増大している。痴呆症の約60%以上はアルツハイマー病が原因と言われている。従ってアルツハイマー病は大きな社会問題となっている。その原因はアミロイドβの凝集が原因と考えられているが、その治療薬はまだ承認されていない。そこで治療薬のリード化合物の候補になりえる化合物を天然資源、特に研究があまり進んでいない海洋由来真菌類に求めることにした。初めに我々の研究室の海洋由来真菌の培養抽出物ライブラリーを用いて、ランダムスクリーニング(Th-T法:アミロイドβ凝集試験)を行った。その結果凝集抑制の認められたGalactomyces pseudocandidus (MPUC 398)の酢酸エチル抽出エキスとMPUC 239の酢酸エチル抽出エキスに関して活性試験を行いながら、分離操作を行っている。現在Galactomyces pseudocandidus (MPUC 398)の酢酸エチル抽出エキスからは1種の新規化合物を含め合計3種の化合物を,MPUC 239の酢酸エチル抽出エキスからは2種の化合物を単離しそれぞれ構造を明らかにした。このうち、Galactomyces pseudocandidus (MPUC 398)の酢酸エチル抽出エキスから単離した既知化合物SC2051は強いアミロイド凝集抑制活性を示した(IC50 = 2.5 μM)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度では、チオフラビンを用いたTh-T法でランダムスクリーニングを行いアミロイドβ凝集抑制活性を示したGalactomyces pseudocandidus (MPUC 398)の酢酸エチル抽出エキスを用い、活性試験を行いながら分離操作を進め、Fr. E4から化合物1を、Fr. E3から化合物2を単離した。2018年度では、さらにFr. C2から化合物3を単離した。次に各化合物の各種スペクトルデータから構造解析を行い、化合物1はpyridone alkaloid類の新規化合物であったので、galactopyridoneと命名した。化合物2はbis (naphtho-γ-pyrone)類の既知化合物SC2051、化合物3はpyridone alkaloid類の既知化合物harzianopyridoneであった。次に得られた3種の化合物についてアミロイドβ凝集試験を行った結果、化合物2(SC2051)のみがIC50の価が2.5μMと強い活性を示した。 一方ランダムスクリーニングでアミロイドβ凝集抑制活性を示した別の海洋由来真菌MPUC 239の酢酸エチル抽出エキスに関しても活性試験を行いながら分離操作を行った。初めにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで5個の画分に分画した(Fr.1~Fr. 5)。活性画分Fr.2をさらに分離を行い、Fr. 3-2から化合物AをFr. 3-4から化合物Bを単離した。次に各化合物の各種スペクトルデータから構造解析を行い、化合物Aはnaphtho-γ-pyrone類の既知化合物fonsecin、化合物Bもnaphtho-γ-pyrone類の既知化合物rubrofusarinであった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 2018年度活性があり構造も明らかとなったbis (naphtho-γ-pyrone)類の既知化合物SC2051について、電気泳動を用いて凝集が抑制されることを証明する。 2. 海洋由来真菌MPUC 239の酢酸エチル抽出エキスの活性画分からのさらなる化合物の単離を目指す。ここで得られた化合物は各種スペクトルデータから構造を解明する。さらに得られた化合物に関し、Th-T法でアミロイドβ凝集抑制活性を調べ、活性を示した化合物については、電気泳動を用いて凝集が抑制されることを証明する。
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