研究課題
我々がこれまでに見出したretinoid X receptor (RXR)アゴニストであるホオノキオールをシード化合物として各種の化合物を合成し、PPARδ/RXRヘテロダイマーを選択的に活性化するRXRアゴニスト化合物1を見出した。そこで本化合物1がアルツハイマー病(AD)モデルマウスであるC57BL/6-App<tm(NL)Tcs(APP NL-G-Fマウス)に及ぼす効果を検討した。APP NL-G-FマウスはADのプレクリニカル期の病態を呈するモデルと考えられており化合物1の効果を検討したところ、化合物1を1週間強制胃内投与することにより、海馬で発現が上昇していた炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα)、活性化ミクログリアやアストロサイトのマーカー(IBA1, GFAP)のうち、IL-1β、IL-6、IBA1のmRNA発現を選択的に減少させ、脳内炎症を抑制できる可能性が示唆された。また化合物1はミクログリア様MG5細胞をリポ多糖(LPS)で刺激した際に産生されるIL-1β、IL-6、TNFαなどの炎症性サイトカインの発現を1μMの低濃度で著しく抑制した。次に、サンズコンから単離したRXRアゴニストであるプレニルフラバノン(SPF及びSPC)の新規生物活性を検討したところ、SPFとSPCはミクログリア様MG5細胞に対して、メタロチオネインIIを著しく誘導する活性を示した。その活性は合成RXRアゴニストであるベキサロテン(Bex)より強く、最大誘導活性はSPF>SPC>Bexであった。3年間の研究を通して得られた結果より、各種の天然由来RXRアゴニストが脳内の慢性炎症を抑制する活性を示す可能性が示唆され、RXRアゴニストがADのプレクリニカル期を標的にした新たな予防、治療法の確立に大きく貢献するものと考えられた。
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ACS Chemical Biology
巻: - ページ: -
10.1021/acschembio.0c00146
愛知学院大学薬学会誌
巻: 12 ページ: 1-14
http://www.phar.agu.ac.jp/lab/med_res/top.html