研究課題/領域番号 |
17K08353
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
井藤 千裕 名城大学, 薬学部, 教授 (60193497)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん予防効果 / キサントン / 神経細胞保護作用 / 細胞死抑制効果 / シンナミルフェノール / アポトーシス誘導効果 / アセトフェノン二量体 |
研究実績の概要 |
1)オトギリソウ科Calophyllum elatumより単離したキサントン類の構造および単離した化合物のがん予防効果 オトギリソウ科C. elatumより数種のキサントン類を単離、各種スペクトルデータの解析により、それらの構造を決定した。単離した化合物について、がん予防効果を検討したところ、isogarciniaxanthone Eに著しい予防効果が認められた。 2)マメ科Dalbergia odoriferaから単離したシンナミルフェノールの培養ラット海馬神経細胞の保護作用 マメ科D. odoriferaから単離したシンナミルフェノール、hydroxyobtustyreneの培養ラット海馬神経細胞に与える影響を検討した。Hydroxyobtustyreneは常用密度では影響を与えなかったが、低密度において海馬神経細胞の生存率を有意に増加した。また、神経細胞の突起伸長や突起数には影響を及ぼさなかったが、細胞内ERKおよびp38活性が増加する傾向が認められた。また、hydroxyobtustyrene の投与によりシアニドによる細胞死が抑制され、アポトーシスを起こしている細胞の減少およびNO濃度が低下する傾向が見られた。 3)ミカン科Acronychia pedunculataより単離した2種のアセトフェノン二量体のヒトプレB細胞白血病細胞株NALM-6細胞に対するアポトーシス誘導効果 台湾産 A. pedunculata より 2 種のアセトフェノン二量体を単離、各種スペクトルデータの解析よりそれらの構造を決定した。単離した二量体について、ヒトプレB細胞白血病細胞株NALM-6細胞に対するアポトーシス誘導効果について検討したところ、acrofolione A は acrofolione B より強い細胞増殖抑制効果を示し、さらに、アポトーシス関連のシグナル分子を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実施計画どおり、前年度にTNF-α分泌を顕著に抑制したビフェニル類について、βヘキソサミニダーゼ放出、細胞内Ca2+動態について検討した。ビフェニル類はβヘキソサミニダーゼ放出を顕著に抑制したが、細胞内Ca2+動態には影響を示さなかった。さらに即時型アレルギーの遅発相に関わるTNF-αとシクロオキシゲナーゼ2(COX2)のmRNA発現を検討したところ、抗原刺激1時間で両者に有意なmRNA発現の低下を認めた。 新たに褐藻植物、マジリモクSargassum carpophyllum J. Agardhから単離したフロロタンニン類について同様の検討を行ったところ、βヘキソサミニダーゼ放出およびCOX2のmRNA発現について、ともに抑制が認められた。 また、植物エキスから新たに種々の天然有機化合物を単離・構造決定した。
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今後の研究の推進方策 |
活性が明らかとなったビフェニル類とフロロタンニン類について、これらの発現を制御することが想定される細胞内情報伝達分子のp65NFκBとp38MAPKのタンパク発現についての検討を進める。又、フロロタンニン類については細胞内の活性酸素種の変化を測定する。 また、iTRAQ試薬を用いたLC-MS解析およびIn Silico解析から、単離した化合物の標的タンパクを模索する予定である。 なお、新たに天然資源から単離した各種有機化合物についても、引き続き抗アレルギー活性試験を行う予定である。
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