研究課題/領域番号 |
17K08354
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
中村 誠宏 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (20411035)
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研究分担者 |
松田 久司 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (40288593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線治療 / X線照射 / X線防護作用 / X線増感作用 / アマチャ / クマリン / フタリド / DNA保護作用 |
研究実績の概要 |
本研究では天然薬物から得られる含有成分およびそれらの誘導体を用い、各細胞への X 線照射における防護あるいは増感作用試験を行う。次に、有望な化合物について作用メカニズム解析を進め、正常細胞選択的な X 線防護作用成分およびがん細胞選択的な X 線増感作用化合物を見出し放射線治療における副作用の軽減薬としての候補物質を提案することを目的とする。本年度は、アマチャ発酵葉および花部の成分であるイソクマリン thunberginol G およびフタリド thunberginol F などに有意な X 線防護作用があることを見出したことから、それらの関連化合物である 3-フェニルクマリン誘導体を約 20 種合成し活性の評価を行った。その結果、8 位に水酸基を有する 3-フェニルクマリン誘導体等に有意な防護作用があることを見出した。防護作用を示した化合物群は、ヒト正常線維芽細胞に対して細胞毒性を有しないことが明らかになった。また、thunberginol G および F などが、弱い抗酸化作用しか示さないことや pUC19DNA 開裂試験の検討から DNA 保護作用を有することなどを明らかにした。以上から、これらの化合物は X 線照射によって惹起されるヒドロキシルラジカルなどの活性酸素に対する防護作用以外の作用メカニズムを有することが考察された。一方で、クマリン誘導体の一つが有意な X 線増感作用を示すことを明らかにした。また、活性が期待できるトリテルペンなどのアグリコン部の 3 位に着目して、3 位の置換基を変換した 15 種の誘導体を合成するとともにヒガンバナ科アサツキ全草、ニラ全草、アカネ科アカネ根部、アブラナ科ホソバタイセイ根部、キンポウゲ科クロタネソウ種子およびスイレン科コウホネ根部から 50 種類以上の多様な化合物を単離し得られた化合物の活性評価を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生薬アマチャからクマリン誘導体成分の単離を進めるとともにクマリン誘導体やオレアナン型およびルパン型トリテルペン誘導体の合成を行った結果、特に3-フェニルクマリン誘導体等が有意な X 線防護作用を示すことなどを見出し構造活性相関に関する知見を得ることができた。また、有意な X 線防護作用を示したイソクマリン誘導体 thunberginol G の作用メカニズムの一部を明らかにすることができた。さらに、数種の天然薬物から 50 種類以上の多様な化合物を見出すとともに、幾つかの誘導体を合成することができた。昨年度に引き続きメラノーマ細胞 B16-F10 を注入したモデルマウスに対する X 線増感作用について検討を行うなど本年度の当初計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
有望なイソクマリン誘導体 thunberginol G およびフタリド thunberginol F に関しては、量的確保を進めるともに、in vivo 試験およびさらに詳細に作用メカニズムについて検討を行う。また、クマリン、トリテルペンなど有意な作用を示した化合物の化学誘導を引き続き行うとともに、構造活性活性相関について詳細な検討を進める。また、これまでに得られている化合物の活性評価を進めるともに天然薬物から活性化合物の探索を引き続き実施する。さらに、活性化合物の in vivo試験および作用メカニズムの解析研究を継続して実施する。
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