研究課題/領域番号 |
17K08355
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
奥 尚枝 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (90281518)
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研究分担者 |
本田 千恵 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (90411983)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗かゆみ物質 / 天然資源 / 痒みモデル / 淤血 / ストレス |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎などの重篤かつ難治性の痒み(かゆみ)の治療に用いるかゆみ抑制薬の開発を目的とし、痒みの過敏(増悪化)因子として一般に言われているストレスや、漢方で言う淤血(古い血の滞り)に関連した痒みモデルマウスの作成と、それらを用いた天然資源から痒み抑制物質の探索を行なってきた。今回は、卵白リゾチームを抗原(異物)としてマウスを感作して作製する「淤血病態の患者に見られる強く難治療性の痒みの病態モデルマウス」の血液中で増加する生体内物質を調査した。その結果、感作の24時間後にサイトカインの1種である腫瘍壊死因子-γ、6日目にインターロイキン5が増加していることを明らかにした。現在、これらの増加とかゆみの難治化について、各阻害剤を用いた動物実験により詳細を確認中である。さらに、民間あるいは漢方で, 痒み関連疾患への適用が伝承されている天然資源について調査を行い、見出した候補植物を収集した。次いで、これらから各エキスを作製し、マウスの痒み(引掻き動作回数)を指標としたアッセイ法に適応した結果、新たにToxicodendron succedaneumの地上部およびHedera helixの葉に抗かゆみ活性を見出したことから、これら植物が抗かゆみ物質探索のための資源植物となることを明らかにした。現在、これら植物から活性物質を単離、精製中である。同時に、前年度見出した資源植物Hypericum patulumの花部からフラボノイドの2量体を単離し、現在詳細な構造を解析中である。また、ストレス性痒みへの強い抑制効果を示したH. patulum花部のMeOHエキスについては抑制メカニズムの解明を試みた結果、正常(痒み疾患の無い)マウスの自発(自然な)運動には影響せずに、睡眠剤を処置した時の睡眠時間の延長や、カフェインによる興奮状態への抑制効果があることを明らかにしたことから、本植物の鎮静効果はストレス性かゆみへの治療に応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
淤血(古い血の滞り)に関連したかゆみ過敏(増悪化)に関連する可能性が示唆される血液中の生体内因子の解析に成功した。今後は、それらを手がかりにかゆみ過敏(増悪化)メカニズムの解明を目指せるものと考える。一方で、皮膚でのかゆみ関連因子の解析、さらに昨年度肥満細胞から見出した痒み過敏関連機能性タンパク質分子に着目した新しい病態モデルや評価法の作製に関しては完成に至らなかったことからやや遅れていると考える。なお、並行して行なった新たなシーズ植物の探索、および資源植物からの化合物の単離実験も、新たな単離、構造解析、活性評価およびメカニズム解析実験へと順次進められたことは、おおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度肥満細胞から見出した痒み過敏関連機能性タンパク質分子に着目したアッセイ系の新規構築を目指す。さらに、本年度、見出した淤血(古い血の滞り)に関連したかゆみ過敏(増悪化)に関連する可能性が示唆される血液中の生体内因子を手がかりにかゆみ過敏(増悪化)メカニズムの解明を目指す。 また、それらと並行し、新たなシーズ植物の探索、および植物からの活性化合物の単離、構造解析、活性評価やメカニズム解析を引き続き進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は既存の自動痒み測定装置の動作性を改良する為の追加機器を購入する予定であったが、より簡便(動物への手術が不要)かつ正確に測定可能な新規自動痒み測定装置が別の会社より発売されたことから、後述の機器を用いることに更変した。一方、新装置は高価格のため購入ではなくレンタルで対応するため、当初の機器購入額より安価となった。さらに、そのレンタル期間を最大限に有効に活用するためには、化合物の痒み試験を当初の「順次」ではなく「短期間に集中して」行うこととし、本年度の前半は一定数以上の試験化合物が蓄積につとめたためレンタルは1回となり、さらに使用額に差が生じた。次年度は2回行う予定である。
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