アトピー性皮膚炎などの重篤かつ難治性の痒み(かゆみ)の治療に用いるかゆみ抑制薬の開発を目的とし、これまでに痒みの難治化因子として知られるストレスや淤血(古い血の滞り)に関連した痒みモデルマウスの構築、および、それを用いて天然資源から痒み抑制物質の探索を行なってきた。これらの実験の過程で、同じ痒み刺激にもかかわらず激しい引掻き動作(=かゆみ応答)を誘導する「過敏なマウス」と引掻き動作が顕著に少ない「鈍感なマウス」が存在することを見出したことから、両マウスの起痒メカニズムの違いの解析は新たな治療標的分子の探索に繋がるとの着想に至った。そこで、先の肥満細胞に引き続き、本年度は、両マウスの胸腺での発現タンパク質の差異を解析した。その結果、過敏なマウスでは、先の肥満細胞と同様のtalinをはじめ50種のタンパク質の特徴的な発現を認めた。一方、鈍感なマウスでは、coroninやannexinをはじめとする23種の特徴的な発現を認めた。現在、これらのタンパク質について治療標的分子としての可能性を検討中である。さらに、マウスの引掻き動作回数を指標としたアッセイ法を用いてシーズ植物の探索を行い、今年度はKummerowia striataおよびPersicaria longisetaの地上部に新たに活性を見出した。さらに、同活性を指標にP.longiseta よりフラボノール誘導体を、K. striataよりフラボン誘導体を単離、構造解析し、現在、活性および作用メカニズムを解析中である。
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