研究実績の概要 |
目的:重積発作(SE)後早期の脳内炎症関連遺伝子が誘導されたため、SE後の脳内炎症関連分子を網羅的に解析した。 方法:SE-モデルは、ICR雄性マウス(8~10 週齢)にピロカルピン(PILO、290 mg/kg, i.p.)を投与し作製した。PILO投与60分以内に5回の全身けいれん発作を確認した後、ジアゼパム(10 mg/kg, i.p.)でSEを終息させた。6時間(N=4)および2日後(N=4)に、血液細胞の影響を除去するためPBSで脳内灌流した後、海馬を摘出しTris/NaCl/Tween20バッファーでタンパク質を抽出、111個の細胞外因子を検出できるMouse XL Cytokine Array Kitで網羅的解析をした。さらに、脳内炎症関連細胞のFACS解析を予備的に検討した。 成績と考察:SE後2日まで炎症マーカーのPentraxin3の発現が顕著に増加していた。SE前と比べSE後に検出可能な20種すべてのサイトカイン発現量が増加し、特にIL-6,17,23,33,TNF-αは4倍以上上昇した。ケモカインも同様にSE後に10種類のケモカイン発現上昇が観察され,特にSE2日でCCL2,5,12,CXCL1,10で顕著であった。この結果は、脳内ミクログリアまたは浸潤マクロファージ/単球の関与が示唆された。そこで、予備的に海馬内のこれらの細胞(CD45/CD11b陽性)をFACSで観察した。この結果、特にSE2日後にマクロファージ/単球の海馬内浸潤が観察された。つまり、SEご早期には脳内炎症が発症し、それにはマイクログリアまたは浸潤マクロファージ/単球が関与しSE誘発サイトカインストームが出現することが示唆された。つまり、SE後早期の脳内炎症のサイトカインストームを制御する(例えば五苓散投与)ことでSE後自発てんかん発作発症を抑制する可能性を示した。
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