研究実績の概要 |
「脳内炎症を介した脳浮腫及び血液脳関門(BBB)機能不全を制御できる漢方療法は、2次性てんかん発症を予防出来る」との仮説を提起し、漢方薬・五苓散の重積けいれん発作後の海馬での水毒性と抗炎症効果に対する関与を検討した。 けいれん発作を指標にレベチラセタムのてんかん予防効果の検討を行ってきた。けいれん重積発作(SE)後の脳浮腫は,炎症を伴い局所的に生じる。脳浮腫抑制薬は,水異常分布と炎症を両方抑制することが理想的である。そこで、SE後のBBBや炎症関連分子発現、血管新生や浮腫はMRI形態的時空間的変化に対する漢方薬の効果を明らかにした。また、慢性的脳波測定で発作発現を評価した。 SE後特に早期(2~3日)に脳内(海馬、扁桃体)で一過性BBB透過性亢進とそれに伴う脳浮腫の発現であった。そこで、脳神経外科で脳浮腫改善効果を期待した五苓散に着目した。 五苓散はSE後1日3回経口投与することで、アクアポリン4を介するBBB透過性亢進と血管原性脳浮腫を抑制した。その時期と一致して、脳内炎症が誘発(脳炎症マーカーPentraxin3の顕著な発現上昇)され、ミクログリアや脳内浸潤マクロファージ/単球は活性化された。多くの炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6,TNF-α等)遺伝子・タンパク質が高発現しSE誘発脳内サイトカインストームが出現することが観察された。五苓散はミクログリア、浸潤マクロファージ/単球が関与したSE直後のサイトカインストームを制御した。てんかん様脳波変化は認められたが、残念ながら五苓散による有意な抑制効果は観察されなかった。これらの結果は、五苓散単独投与では、SE後発作を抑制する効果は限定的であったが、他の抗てんかん薬(特にレベチラセタム)と併用することで2次性てんかん発作の出現を抑制でき可能性を示した。
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