研究課題
本研究課題ではテイーサックス病の原因酵素であるβ-hexosaminidase Aの安定性を高める実用的なシャペロン化合物の創製を目標にしている。昨年度までにhexosaminidase Aタンパクの活性中心は非常に柔軟性に富んでおり、イミノ糖が高い親和性を獲得するためにはArg178, Asp322, Tyr42,Glu462との水素結合形成およびTrp460とのcation-π相互作用形成が必要である事を見いだしている。これら得られた情報を元に、今年度は、これら2つの条件を満たすイミノ糖の合成を行い順次評価を行ったが、結果的に昨年報告したDMDPamideを上まわる親和性を示す化合物は得られなかった。そこで、水素結合およびcation-π相互作用以外に親和性を上昇させる新たな要因を探ったところ、hexosaminidase Aタンパクの活性中心にアルキル鎖を許容する脂溶性ポケットが存在している可能性を示唆する結果が得られた。そこで、DMDPamideのNHAc部位およびピペリジン環のNH部位にブチル基を導入し親和性の変化を調べた。その結果、親化合物であるDMDPamideでは、hexosaminidase Aに対しIC50値が0.041μMと強い親和性を示したのに対し、NHAc部位にブチル基を導入した化合物ではIC50値が19μMと著しい親和性の低下が認められた。一方、ピペリジン環のNH部位にブチル基を導入した化合物ではIC50値が0.15μMとNHAc部位への導入と比べ親和性が維持される傾向が認められた。本領域で汎用されるa-glucosidaseを用いた従来の研究では、親和性向上の手段としてN-アルキル基を付加する手法がとられ、実際にa-glucosidaseの代表的な高親和性化合物である1-deoxynojirimycin (DNJ)にN-ブチル基を導入したN-butyl-DNJでは親和性が高まる傾向を示すことが知られている。今回hexosaminidase Aで見られたアルキル鎖に対する認識性の違いは、これらとは明らかに異なっており、このリガンドに対する認識の違いが新たなデザインのヒントに繋がると考えている。
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