研究課題/領域番号 |
17K08363
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
千葉 順哉 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (50436789)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クリックケミストリー / 薬学 / 生体分子 / 有機化学 / チオアミド / スルホニルアジド / チオウレア |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が最近開発した新規なクリック型の化学反応(チオアミドとスルホニルアジドの選択的反応)を生体系に展開することを目的とする。研究2年目となる今年度は、次の2点について重点的に研究を展開した。
(1)チオアミドとスルホニルアジドが関与する光化学反応の検討・・・生体分子のチオアミド化法の1つに、光反応によるチオアミドの導入を予定している。これに先立ち、チオアミドやスルホニルアジドそのものの光化学反応特性を把握する必要がある。様々な溶媒を用いて、チオアミドやスルホニルアジドそのもの、また、それらの混合溶液の光化学反応を追跡した。その結果、水中において、チオアミドとスルホニルアジドそれぞれは光照射(高圧水銀灯)に安定であったのに対し、それらの混合溶液ではクリック反応の劇的な促進が示唆された。
(2)チオウレアを用いた新規クリック型反応の開発・・・(1)における光化学反応の検討途中に偶然ではあるが、チオウレアもクリック型反応の基質となりうる基礎的知見が得られた。チオアミドの代わりにチオウレアを用いる、チオウレアとスルホニルアジドのクリック型反応は前例がなかったため、研究開始当初の計画には無かった項目ではあるが、世界初となる新規な化学反応を検討することにした。その結果、単純なチオウレア骨格は反応性に乏しいものの、置換基を導入したチオウレアでは様々なスルホニルアジドとクリック型の反応が進行することがわかった。本成果は論文としてまとめて投稿し、現在審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の生体分子への展開に向けて、光化学反応の基礎的知見を順調に得られたのみならず、新規なチオウレア型の化学反応も開発できた。また今年度は発表論文こそ無かったものの作成した論文は現在審査中であり、特許に関しては出願時期こそ本研究開始前ではあったものの、今年度に関連特許2件を取得できた。さらに、フッ素導入型のスルホニルアジドの製品化に向けて、国内試薬会社へ2種類の化合物を提供することもできており、順調に研究を展開できていると判断できるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の3点に関して重点的に研究を展開する予定である。
(1)生体分子へのクリック反応の検討・・・当初予定していた次の3つの生体分子のチオアミド化法(a)有機化学的な官能基変換、(b)光化学反応によるチオアミドの導入、(c)生体が元々持っている同化経路機構の利用、に関して、これまでに作成したスルホニルアジドやチオアミド誘導体を用いて、順次研究を展開する。 (2)チオアミドとスルホニルアジドの光化学反応・・・今年度得られた新たな基礎的知見として、クリック型反応の光照射による促進が得られた。この知見も前例が無く、確定できれば世界初の成果となるため、本クリック反応の光化学特性に関して詳細に検討する。 (3)チオウレアとスルホニルアジドの新規クリック型反応の展開・・・今年度開発した新規クリック型反応に関して、応用展開を検討する。まずは、「(1)生体分子へのクリック反応の検討」における生体分子のチオアミド化法と同様の戦略で、チオアミドの代わりにチオウレアを生体分子へ導入することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に市販のタンパク質を購入予定であったが、チオウレアを用いた世界初となる新規なクリック型反応の開発を優先的に進めたため、タンパク質の購入数が予定よりも少なくなったため。次年度にタンパク質や DNA などの生体分子の購入に充当する予定である。
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