研究課題
本研究では、動物モデルにおいても多発性骨髄腫に有効である天然マクロライドを基盤として、多重結合異性体ライブラリー構築により多発性骨髄腫に対してさらに有効な創薬シードの発見と開発を目的としている。申請者が独自に開発した天然マクロライドの全合成経路を基盤とすることで、天然型および非天然型誘導体(計12種)による14員環マクロライド小規模ライブラリーを構築することに成功した。本ライブラリー中から、強力なマイケルアクセプターであるイノン構造を有する新規誘導体Ynone-LLZを見出し、本化合物が多発性骨髄腫細胞に対して顕著な細胞傷害活性を示すことを明らかとした。本化合物は、造血細胞に対して治療濃度域では毒性を示さなかったことから、副作用リスクの低い新規シード化合物であると考えられる。平成31年度では、さらなる動物実験を実施するために、Ynone-LLZの大量供給に向けた各種検討を開始した。すなわち、これまではライブラリー構築を目的としていたため、合成の終盤で多様性を持たせるべく非選択的な反応を用いた立体発散的手法をとっていた。しかしながら、本法では望みとは異なる立体化学を有する化合物も大量に生じてしまい、Ynone-LLZの大量供給法としては不適であった。そこで、より立体選択的な反応を組み入れた新規合成経路を検討した。すなわち、これまで閉環メタセシス反応によって構築していた二重結合部分を、初めから望みの立体化学を有する有機スズ化合物を用いたStilleカップリング反応によって構築することで異性体比が改善され、望みの立体を有する中間体を選択的に得ることに成功した。これにより、動物実験に向けて問題であった供給経路を確立する足掛かりを築くことができた。
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