ユビキチン化はタンパク質分解系の一部として研究されてきたが、近年の精力的な研究から生体機能調節を司る重要な役割も有することが明らかとなってきた。特にタンパク質のユビキチン化異常はがんや神経変性疾患などに関与し、死や健康寿命低下の一因となっていることも多数報告されている。したがって、タンパク質の異常なユビキチン化状態を把握できれば、ユビキチン関連疾患のメカニズム解析やユビキチン化状態に応じた診断・治療が可能となると期待できる。しかし、どのタンパク質が、いつ、どの程度ユビキチン化を受けるかを分析することは非常に困難で細胞レベルでユビキチン化タンパク質を検出・定量するのは 難しい。そこで、申請者は細胞内のユビキチン化タンパク質を簡便かつ効率的に検出する手法の開発を究極的な目的とし、研究を行った。 本研究では、ユビキチン活性化酵素E1に基質として認識され、ユビキチンと同様にユビキチン結合酵素E2に転移する分子の創製を行っている。昨年度までに、ビオチンプローブ基の導入位置ならびにリンカー構造検討のための数種類の化合物の合成に成功していた。最終年度はこれらの活性評価を中心に行った。その結果、ユビキチンと同様の挙動を示す化合物の創製に成功した。また、これらの化合物について、より高度な実験系、すなわち、ユビキチンがE1からE2への転移が起こりうるかどうかを調べた。その結果、ユビキチン分子と同様にE1からE2への転移することが示唆された化合物の成功した。
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