研究課題
本年度は、研究代表者らが開発したタンパク質のヘテロ連結技術を用いることによって、2種類のErbB受容体(EGFRおよびHER3)を標的とするヘテロ4量体型の二重特異性抗体を作製し、薬物送達系への応用について検討を進めた。まず、2種類の抗ErbB受容体抗体可変領域に対して、2種類のヘテロ会合ペプチドをそれぞれ融合し、大腸菌を用いて共発現させた後、培養上清から金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより目的タンパク質を精製した。また、二重特異性化による効果を検証するために、EGFRを標的とする4量体型の単一特異性抗体も同様に調製した。ゲルろ過および質量分析の結果から、二重特異性抗体は異なるポリペプチド鎖間でジスルフィド結合を形成し、主に4量体として存在することがわかった。フローサイトメトリーを用いて、EGFRおよびHER3を発現している膵臓がん細胞株BxPC3に対する結合を調べたところ、結合価が同一であるにも関わらず、単一特異性抗体に比べて、二重特異性抗体ではより大きなピークシフトが見られた。次に、SMCCリンカーを介して、チューブリン重合阻害剤であるDM1をアミンカップリング法により結合させ、二重特異性抗体および単一特異性抗体の薬物複合体を調製した。電気泳動により分析した結果、未修飾の抗体に比べて、抗体薬物複合体は高分子量側に検出された。BxPC3に対する細胞傷害性を調べたところ、2種類の抗体薬物複合体はともに傷害性を示したが、二重特異性抗体薬物複合体は単一特異性抗体薬物複合体より高いがん細胞傷害性を有することがわかった。以上の結果から、二重特異性抗体の薬物送達系への応用において、本研究で開発してきた特異的タンパク質連結技術は有用であると考えた。
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