研究課題/領域番号 |
17K08369
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
波多江 典之 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (30449912)
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研究分担者 |
町支 臣成 福山大学, 薬学部, 助教授 (10248297)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多環縮環型複素環 / ペリ環状反応 |
研究実績の概要 |
当該年度は、多環縮環型複素環化合物群の合成法の構築を中心とし、さらに評価方法の確立を目指した研究を実施した。まず多環縮環型複素環化合物群の簡便合成法の開発については、アレニルエーテルとハロゲン化ジエンとの分子内環状付加反応について検討し、特にジエン部に芳香環を導入した分子について、その反応の開発を行った。多環縮環型の化合物合成において、反応に関与するジエン部に芳香環を導入することは、化合物群の合成において必要と考えられる。そこでベンゼン環、チオフェンをジエン部に導入した基質での分子内環状付加反応について検討したところ、チオフェンでは、目的とする環化反応が進行した。この反応制御機構について、ビニルチオフェンのビニル部の回転障壁について分子軌道計算を行ったところ、チオフェンの回転障壁はほとんどないことが明らかとなった。この要因として、硫黄原子のファンデルワールス半径の大きさが示唆された。これに対して、スチレンでは、ベンゼン環の回転には大きな障壁があり、さらに環状付加反応の際、脱芳香環化が必要となるため、遷移状態エネルギーは著しく高くなり、結果、目的とする環状付加反応が進行しなくなることが明らかとなった。次に、化合物群の評価系の確立に並行して着手した。評価系としては、多検体対応型のCaシグナル評価系の構築と、細胞毒性に関する評価系の2種類に着手した。多検体対応型Caしぐなる評価系については、マイクロプレートリーダーを用いることで、その可能性が確立されつつある。細胞毒性については、目的とする化合物ライブラリーが完全には完成していないため、リピドカルバゾール誘導体およびアリールピペリジン誘導体によるライブラリーで、評価系の確立および検証を行った。本研究により、両化合物による抗腫瘍活性発現構造に関する知見を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、ライブラリーの構築を目指して、多環縮環型複素環ライブラリーの合成法の構築を主課題として、また並行して、評価系の構築を行うものである。 ライブラリー構築のための、アレニルエーテルとジエンの分子内環状付加反応については、反応基質の精査および反応制御に関する分子軌道計算の結果との相関性が明らかとなってきている。これらの結果より、本反応の反応制御法について、ほぼ解明されてきており、このことは種々の化合物を合成しライブラリーを構築する上で、重要なエビデンスとなる。 一方、活性評価系については、現在進行中であるが、本研究の骨子ともいえる多検体対応型Ca評価系については、ほぼ完成しつつあることより、おおむね順調に研究が遂行されているものと判断する。また、ヒット化合物については、細胞毒性を評価することを計画しており、このため細胞毒性の評価系の確立と検証が必要となる。目的とする多環縮環型複素環ライブラリーは未だ完成していないため、確立した細胞毒性の評価系の検証を、アリールピペリジン誘導体ライブラリーで行い、その評価系の堅牢性を示すことに成功した。 以上、ライブラリー構築法の確立、評価系の確立ともに、予定通り実施されており、概ね順調に進行していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、前年度に引き続き誘導体合成と多検体評価系の構築とともに、実際に合成された化合物の活性評価に着手する。また活性発現構造の解析には、化合物情報に加えて、受容体からの構造情報も必須とされる。そこで、特にセロトニン2C受容体について、キメラ受容体の作製に着手する。 誘導体合成については、平成29年度の研究にて得られた知見をもとに、化合物ライブラリーの構築を図る。このライブラリーに対して、現在開発中の多検体評価系およびCa顕微鏡を駆使して、Gq活性を測定する。また活性の認められた化合物について、リガンド結合実験を行うとともに、将来的にin vivo実験への展開を見据えて、細胞毒性試験を行う。さらに活性の認められた化合物について、化合物の構造展開に必要な活性構造の解明を志向して、5HT2Cと5HT2Aとのキメラ受容体の作製をオーバーラップ伸長法により実施する。本検討により、5HT2受容体ファミリーのリガンド結合領域を解明し、シード化合物の結合様式について解析する。 またシード化合物の結合様式の解明については、分子軌道計算により実施する。多環縮環型複素環化合物の化学構造的特徴は、連続した環構造による自由度の抑制と、歪んだ環同士の共鳴による特徴的な電子密度である。このため特に、n,π電子の配向に関するパラメーターが生物活性発現に重要と考えられる。そこで、分子同士の分子力場計算によるフドッキングシュミレーションではなく、分子軌道計算(Spartan16)を活用し、活性発現に必要な物理化学的パラメーターの抽出を志向する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの支出であったが、一部消耗品が既に所有の物を使用したため、予算より低くなった。次年度はライブラリーの構築があるため、試薬に多額の予算が必要となるため、消耗品費として補充使用する。
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