研究実績の概要 |
核内受容体のリガンド結合ドメイン (LBD) の構造解析は、核内受容体の制御機構の解明及びリガンド開発などに貢献してきた。本研究では、核内受容体の一つであるビタミンD受容体 (VDR) のコファクター (コアクチベーター/コリプレッサー) 由来ペプチドを合成し、結晶構造解析に利用することで、VDR-LBDの多様な構造を検出することを目的とした。最終年度では、VDR-LBD/コアクチベーターペプチドRIP140-5/活性型ビタミンD3 (1,25D3) 複合体結晶の回折データを解析し、VDR-LBDの結晶化で汎用されるDRIP205-2と比較することで、Glu416とRIP140-5の水素結合は3本であったのに対し、DRIP205-2では2本であることを見出した。Glu416との水素結合の相手が、RIP140-5ではProでなくSerであるため水素結合が増えたと考えられる。昨年度までにDRIP205-2よりもRIP140-5のほうがVDR-LBDに強く結合することが分かっており、Glu416との相互作用がRIP140-5の結合に有利に働いたと考えられる。複合体の安定性は結晶化に大きく影響すると考えられるため、RIP140-5はこれまで結晶化が困難であったVDR-LBDとリガンドの組み合わせの共結晶構造解析に貢献すると期待できる。また、19残基のコリプレッサーペプチドNCoR-2 (NCoR-2-19)を固相合成し、1,25D3の存在下及び非存在下、VDR-LBDとの結合の強さを調べた結果、13残基のNCoR-2は結合しなかったのに対し、19残基のNCoR-2-19ではそれぞれ46及び57 microMのKD値が得られた。19残基以上の長さをもつコリプレッサーペプチドを用いることで、VDR-LBDとコリプレッサーの共結晶構造解析に新たな進展をもたらすと期待できる。
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