研究課題/領域番号 |
17K08375
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
袴田 航 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10333337)
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研究分担者 |
氏家 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50415478)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗ウイルス / 糖鎖 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
新興・再興ウイルス感染症が毎年のように大きく報道および報告されているが、細菌感染症に対する抗生物質に比べ、抗ウイルス薬の開発は大きく遅れており、新規な抗ウイルス薬の開発が喫緊の課題となっている。本研究では、薬剤耐性ウイルスの出現回避を目指した、宿主の酵素によるウイルス特異的増殖プロセスを標的とした抗ウイルス薬の探索と開発を目指している。そこでウイルスコートタンパク質の糖鎖合成阻害がウイルスの感染性を大幅に低下させる事および糖鎖合成阻害がウイルス粒子の成熟を阻害することに着目し、これら糖鎖合成を司る酵素の阻害剤は薬剤耐性回避型抗ウイルス薬となると考えた。本研究では、培養細胞内で機能する糖鎖合成酵素特異的蛍光基質を合成し、化合物ライブラリから阻害剤スクリーニングを行い、抗ウイルス薬のリード化合物を得る事を目的とし研究を行なっている。本目的である酵素阻害剤を効率よくかつ確実に得るために、タンパク質の翻訳後修飾の1つであるN-結合型糖鎖合成に着目し、その最初の段階に関与する小胞体グルコシダーゼを標的酵素とした。しかし、これら小胞体グルコシダーゼ阻害剤の研究において、in vitro 阻害活性と細胞レベル阻害活性の不一致が研究の進展を阻んでいた。更に、細胞レベルでの小胞体グルコシダーゼ阻害のアッセイは、ウイルスまたはラジオアイソトープを用いるため、大量の化合物からなる化合物ライブラリからの阻害剤スクリーニングには適していないという現状がある。そこで、標的酵素活性を細胞レベルで可視化する蛍光基質の開発に着手し、培養細胞で小胞体グルコシダーゼ活性のみを特異的に検出可能な阻害剤スクリーニングに適した蛍光基質が得られた。得られた蛍光基質を用いた培養細胞レベルでの標的酵素阻害剤のハイスループットな阻害剤スクリーニング系の構築は、既知阻害剤を用いることにより達成の目処がついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度までの研究実施計画においては、「蛍光基質の分子設計と合成」と「阻害剤スクリーニング系の確立と最適化」の実施を行った。「蛍光基質の分子設計と合成」では、小胞体グルコシダーゼの詳細な基質特異性解析の結果得られた本酵素に特徴的な酵素活性である2-デオキシグルコシダーゼ活性と本来の活性であるグルコシダーゼ活性を基にした標的酵素特異的な阻害剤探索が可能な3色の蛍光基質を合成を試み、すべての基質の合成が概ね順調に推移している。「阻害剤スクリーニング系の確立と最適化」については、前述において合成した蛍光基質を用いて、標的酵素阻害剤のセルベーススクリーニング法の開発を行うために、細胞レベル阻害剤探索系の構築を試みている。いづれの基質も目的を達しているが、最適化に際してはその基質の優劣の評価が重要な課題として浮かび上がってきた。 アッセイ系は、細胞培養および蛍光測定可能な96穴プレートに細胞を培養し、阻害剤または阻害剤候補化合物と本蛍光基質を加えインキュベートを行い、各ウェルの蛍光強度を蛍光プレートリーダーによって測定し、阻害活性の効率的な評価を試み概ね良好な結果を得ている。以上のことから、当初の計画通り研究がおおむね順調に進展していると判断した。しかし、本年度実施する本系の最適化には大きな課題が浮上した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、当初の計画に従いおおむね順調に研究が進展していることから、次年度以降も計画通りに研究を実施する予定である。具体的には、阻害剤スクリーニング系を完成させ化合物ライブラリからの目的物質のスクリーニングの実施を目指している。用いるライブラリは、公的なライブラリが充実しているため、特段の問題は常時無いと思われる。また、これらのライブラリは、微生物および植物の二次代謝産物から構成されており多様な分子骨格を有している。このような幅広い化合物空間を持つ多様性のある化合物ライブラリを用いることで新規阻害剤のヒット率が大きく向上すると考えられる。また、阻害剤スクリーニング研究の開始時には、化合物数が少ないハウスライブラリを用いる予定である。本課題の遂行は、博士前期課程2年(恩田桃子)を研究協力者として実施を予定していたが、本年3月に修了したため、博士前期課程1年(竹本佑平)と博士前期課程2年(小野寺千尋)を研究協力者として実施する。
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