研究課題/領域番号 |
17K08376
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
黒崎 博雅 金城学院大学, 薬学部, 教授 (70234599)
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研究分担者 |
福石 信之 金城学院大学, 薬学部, 教授 (70248326)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | β-ラクタム剤 / ストップトフロー法 / 細菌感染症 / 亜鉛酵素 |
研究実績の概要 |
β-ラクタム剤は感染症治療において頻繁に用いられている抗菌剤であり、とくに広域抗菌スペクトルを示す第三セフェム系やカルバペネム薬は近年急速に使用量が伸びている。しかし、耐性を獲得した病原菌が院内感染の要因ともなり大きな社会的問題となっている。また、メタロ-β-ラクタマーゼはカルバペネム薬を含むほとんど全てのβ-ラクタム剤を加水分解し、かつ現在臨床で使われているクラブラン酸やスルバクタム等のβ-ラクタマーゼ阻害剤に対して感受性を示さない。以前、我々はIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼに対する新規阻害剤として、ダンシルブタンジアミンと3-メルカプトプロピオン酸とを縮合したN-[2-(5-dimethylamino-naphthalene-1-sulfonylamino)butyl]-3-mercaptopropionamide (DansylC4SH)を合成した。平成29年度では、この阻害剤を用いてIMP型およびIND型メタロ-β-ラクタマーゼに対するDansylC4SHの取り込み速度をストップトフロー法ににより検討を行った。本年度では、この2種類のメタロ-β-ラクタマーゼに加えて、世界各国の医療施設で蔓延しているVIM型メタロ-β-ラクタマーゼについて取り込み速度並びに解離速度をストップトフロー法により検討した。DansylC4SHとIMP-1、VIM-2およびIND-7の取り込み速度を蛍光ストップトフロー法により求めた。DansylC4SHのVIM-2への取り込み速度定数k+1と解離速度定数k-1は、それぞれ0.71 μM-1s-1と0.42 s-1 であった。IMP-1では、0.863 μM-1s-1と0.057 s-1、 IND-7では0.06 μM-1s-1と0.085 s-1である。これより、VIMP-2の解離速度は、IMP -1よりも約14倍遅いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類(IMP型、VIM-2型および IND型)のメタロ-β-ラクタマーゼに対するDansylC4SHの酵素反応を分光学的に明らかにすることができた。さらには、本阻害剤のIMP型、VIM-2型および IND型のメタロ-β-ラクタマーゼに対する阻害定数を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
すでにDansylC4SHとIMP-1との複合体の結晶構造を決定している。そこで、残りのVIM-2型および IND型メタロ-β-ラクタマーゼについても共結晶化とX線結晶構造解析を行い、阻害様式を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
阻害剤の合成と酵素の大量培養はすでに終了しており、これらに関する試薬の購入は必要なかった。阻害剤と酵素との分光学的検討も概ね計画通りに進んだこともあり、測定セルやガラス器具の購入のみに充てることができた。
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