研究課題
β-ラクタム剤を分解するラクタマーゼ酵素を産生する細菌が問題となっている。ラクタマーゼにはセリン型ラクタマーゼとメタロ-β-ラクタマーゼにクラス分けされる。後者もメタロ型はほとんど全てのβ-ラクタム剤を分解し、不活化する。近年、新型のメタロ-β-ラクタマーゼが出現し、これは大腸菌や肺炎桿菌から単離され、医療機関外での市中感染型感染症の増加が危惧されている。さらに深刻な問題として、セリン-β-ラクタマーゼには臨床で有効な阻害剤があるが、メタロ-β-ラクタマーゼには臨床応用されている阻害剤は未だに開発されていない。本研究では、メタロ-β-ラクタマーゼに有効な阻害剤開発を目的とした。これに加え、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌を迅速かつ簡便に検出できる検査法の開発を行なった。研究期間に実施した阻害剤については、日本で発見されたIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼと活性中心に存在する120位アスパラギン酸をグルタミン酸に置換した変異体(D120E)を調製し、それらのクエン酸複合体の結晶化ならびに X線結晶構造解析により両者の結晶構造を決定することができた。次に、IMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼ に対する阻害活性の構造的要因を評価するために、クエン酸モノベンジル エステル を合成し、その阻害活性を非置換クエン酸塩と比較した。 クエン酸塩にベンジル基を導入すると、クエン酸塩と比較して阻害活性が増強した(50%阻害濃度IC50>5 mM)。メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌を迅速かつ簡便に検出できる検査法の開発では、独自に合成した蛍光剤を用いて3種のメタロ-β-ラクタマーゼに対する蛍光剤の分光学特性を蛍光ストップトフローを用いて検討した。活性中心部位付近のアミノ酸残基の変異によって取り込み速度と解離速度に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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