研究実績の概要 |
申請者が見出したネクローシス誘導ペプチドを化学ツールとして活用し、新しい白血病治療薬の開発戦略を確立することを目的とし、ネクローシス誘導ペプチドの標的分子の同定を、1)ペプチドアフィニティカラム法、および2)siRNAライブラリーによるTat-Ram13耐性株作製により進めた。 1)ペプチドアフィニティカラムを用いた検討:Tat-Ram13ペプチドのN末端にCysを導入し、アガロールゲルに固定化したペプチドアフィニティカラムを調製した。Jurkat細胞可溶化抽出物よりペプチドに結合する分子を探索した。その結果、SDS-PAGE上、分子量50 kDaのタンパク質が検出された。しかし、酵素消化後、マススペクトロメトリー解析を行ったが、同定するには至らなかった。今後は回収量を増やすことにより、マス解析の精度を向上させて配列同定したいと考えている。 2)shRNAライブラリーによるTat-Ram13耐性株作製:Jurat-T細胞株へのshRNAライブラリー導入により、細胞膜および核内分子を無作為にノックダウンした。Tat-Ram13を添加して生存した細胞群を回収し、次世代DNAシークエンス解析を行い、ノックダウンされている分子を同定した。得られたクローン数の多い分子から上位12遺伝子を候補として選んだ。Tat-Ram13感受性細胞株(Jurkat-T, CCRF-CEM)と非感受性細胞(TALL-1)でmRNA発現量の差を比較した結果、感受性細胞で300倍発現が亢進している分子としてSignal Transducing Adaptor Protein 2 ( STAP2 )を見出した。細胞内アダプタータンパク質STAP2がTat-Ram13が引き起こすネクローシスの制御に関わっている可能性がある。
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