研究課題/領域番号 |
17K08384
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
渡辺 匠 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 部長 (80270544)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がんー間質相互作用 / 抗がん剤リード / 天然物 / ペプチド / 全合成 / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
ロイシノスタチンAは対応する間質細胞の共存下において前立腺がん由来の細胞に対し,非共存下と比較し強力にその増殖を抑制する化合物として見いだされたペプチド系天然物である.本年度は過年度に確立した当該化合物の触媒的不斉全合成法を活用した構造活性相関研究を継続した. 前年までに行ったアラニンスキャンに加え,3箇所に存在するaminoisobutyric acid残基のD-アラニンへの置換を試み,このうち2種について合成に成功した.それぞれの残基について,2つのメチル基のうち活性発現に重要であるものを同定した.また,メチルプロリンのデメチル体を導入した類縁体も調製した.その結果,重要なアミノ酸単位としてメチルプロリン,ヒドロキシロイシン,N末端から1つめのaminoisobutyric acid,N末端から2つめのロイシンが同定された.N末端から2つめ,および3つめのaminoisobutyric acidについては天然体アラニン側鎖に相当するメチル基が必須であることも判明した.更にメチルプロリンのメチル基は,活性発現に対する寄与が限定的であることも確認した.以上の成果に関し,既に論文発表を終えている. 一方,がん細胞の増殖阻害に関する作用機序解析も行った,これまで,ロイシノスタチンAが機能を阻害する蛋白の中から,増殖阻害と直接的にリンクするものを同定しつつある.現在,合成した各種類縁体を用い,その蛋白に対する機能阻害と増殖抑制との相関を解析し裏付けを進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画時に考案した戦略とは異なるがロイシノスタチンAの標的蛋白も同定間近であり,予定より半年以上早い遂行状況である.
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今後の研究の推進方策 |
同様にがん-間質相互作用に干渉する天然物として同定されたインターベノリンに関する創薬基礎研究も並行させている.インターベノリンの標的蛋白と今回の研究で明らかにされつつあるロイシノスタチンAの直接的なターゲットは,細胞内で密接に関連しながら機能を発現していることが判っている.今後はこれらの蛋白群に関しがん分子標的としての妥当性を評価すべく,リード創製を念頭に置いた高次の構造活性相関研究を展開したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は動物実験を含む生物系の実験が多くなることが見込まれ,当初予定より支出が増大することが確実となった.一方で,所属部署内で研究費の効率化を目的とし消耗品等の共用などを進めた結果支出の削減に至り,これを増額された研究予算へ充当することとした.
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