研究課題
がんの増殖はがん細胞自身のみならず,周囲に存在する正常細胞を含む間質に由来する分泌因子によっても制御されることが知られ(がん-間質相互作用),当該因子に働く化合物は正常細胞の遺伝子の安定性に鑑み耐性発現頻度の低い優れたがん分子標的薬のリードとなることが期待される.本課題はがん-間質相互作用に作用する天然物ロイシノスタチンAの触媒的不斉全合成を基盤に,ファーマコフォアの確定,より優れたがん細胞増殖阻害活性および抗がん活性を有する誘導体の探索を試みた.2019年度は高次の構造活性相関研究の基盤とすべく,がん-間質相互作用への干渉に関わる分子標的の確定とその相互作用様式の解明に対し成果を得た.ロイシノスタチンAについて,既にミトコンドリア呼吸鎖関連酵素・complex Vの阻害が知られている.まずはこの活性が,間質細胞存在下でのがん細胞の増殖抑制に関与しているか検証した.前立腺がん由来のDU-145と対応する間質細胞・PrSCの共培養系において,ロイシノスタインとその類縁体は後者からのIGF-Iの発現を抑制することがわかった.また,complex Vの結晶構造を利用したドッキングスタディにより,ロイシノスタチン類の結合モデルを構築した.更に,マウスを用いたin vivo抗がん活性試験において,ロイシノスタチンAといくつかの誘導体には良好な効果が見いだされた.以上の結果により,complex Vの抗がん剤分子標的としての妥当性を示すことができた.この成果は共同研究者と共に論文化した.
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Int. J. Cancer
巻: 146 ページ: 3474-3484
10.1002/ijc.32959
www.bikaken.or.jp