研究課題
低分子医薬品と抗体医薬の特性を併せ持つ中分子ペプチド医薬品の開発が盛んに行われている。特に、タンパク質二次構造のヘリカル構造を模倣したオリゴペプチドは、DNAや他のタンパク質を認識し機能をコントロールできることから、安定なヘリカル構造を形成できるペプチドの設計は高機能中分子医薬品を開発する上で重要なアプローチのひとつである。本研究では、『二次構造制御を基軸としたペプチド創薬研究』を目的とした。具体的には、筆者がこれまでに開拓を行ってきた、短鎖ペプチドの二次構造制御に関する研究を基軸とし、DDSキャリアペプチドの開発、タンパク質間相互作用(PPI)阻害ペプチドの開発、標的タンパク質を分解誘導できるペプチドの開発、を行う。本年度は、環境に応じて二次構造が変化するDDSキャリアペプチドの開発を行った。すなわち、側鎖にグアニジノ基を有するプロリン誘導体(ProGu)をノナアルギニンに導入したペプチドAを設計・合成した。ペプチドAの二次構造をCDスペクトルにより解析した結果、pHおよび親水性の変化によりランダム構造からヘリカル構造へと構造変化することを明らかとした。またペプチドAは接着細胞(HeLa、A549、CHO-K1)、浮遊細胞(Jurkat)に対して高い透過性を持ち、エンドサイトーシスのみならず直接的な細胞膜透過能を持つことが示唆された。さらに、ペプチドAはプラスミドDNAの効率的な細胞内輸送キャリアとして機能することを明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
環境に応じて二次構造が変化するDDSキャリアペプチドの開発に成功し、さらにプラスミドDNAの細胞内輸送キャリアとして機能することを明らかとした。今後、これらのペプチドを利用した高親水性薬剤や高分子薬剤の効率的な細胞内導入研究への発展が期待できる。
本研究では、PPI阻害ペプチドの開発、標的タンパク質を分解誘導できるペプチドの開発も同時に行なっていることから、今後は開発したDDSキャリアをこれらのペプチドにコンジュゲートすることで細胞内導入率を高め、高活性化ペプチドの開発へと展開する。
当該研究テーマにおいて他の研究補助金も同時に使用していたため。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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