研究課題
近年、中分子ペプチド医薬品の開発が盛んに行われており、その中でもヘリカル構造を模倣した中分子ペプチドは、生体内高分子(DNA、タンパク質等)を認識しそれらの機能を制御できることから、ニューモダリティのひとつとして注目されている。本研究では、「二次構造制御を基軸としたペプチド創薬研究」を目的とし、DDSキャリアペプチドの開発、タンパク質間相互作用阻害ペプチド(PPI)の開発、標的タンパク質分解誘導ペプチドの開発、を行なった。本年度は、核内受容体のひとつであるビタミンD受容体(VDR)の転写活性化を阻害できるヘリカルペプチドの開発を行なった。具体的には、VDR相互作用するコアクチベータ配列にヘリカル構造を安定化できる非天然型アミノ酸、側鎖架橋構造を導入したペプチド(SRC)を設計した。また、ペプチドの細胞内導入率を高めるために細胞膜透過フラグメント(CPP)をコンジュゲートしたペプチドを設計した。各ペプチドは、マイクロ波照射を利用した固相法により簡便かつ迅速に合成し、逆相HPLCにより精製した。ペプチドの二次構造はCDスペクトルで解析し、VDR-コアクチベータ結合阻害作用はFRETアッセイ、SPRアッセイによりVDRへの結合能を評価した。さらに、VDRルシフェラーゼアッセイにより細胞内でのペプチドの転写阻害活性を評価した。CPPを導入したペプチドSRC-CPPは、安定なヘリカル構造を形成できること、強いVDR-コアクチベータ結合阻害を持つこと、高い細胞膜透過性を示しVDR転写活性化阻害能を有することを明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
様々な非天然型アミノ酸を天然ペプチドの適切な位置に導入することで、短い配列でも安定なヘリカル構造を形成でき、タンパク質間相互作用阻害剤として機能すること、さらに、CPPを導入することで細胞内においても機能し得るペプチドの開発に成功した。本成果は、中分子ペプチド医薬品開発の基盤技術になることが期待できる。
本年度の成果であるVDR転写阻害ペプチド開発技術を用いて、他の核内受容体を標的とした転写阻害剤開発へと応用する。また、次年度が最終年度であることから、これらの研究成果を学術雑誌へと投稿するために必要な各データの取得を行う。
当該研究テーマにおいて他の研究補助金も同時に使用していたため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 産業財産権 (2件)
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