研究課題/領域番号 |
17K08388
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
唐 寧 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90372490)
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研究分担者 |
早川 和一 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 特任教授 (40115267)
鳥羽 陽 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50313680)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大気汚染 / 黄砂 / 多環芳香族炭化水素 / 吸着 |
研究実績の概要 |
近年,東アジア地域において,主に中国経済の急速な成長に伴ったエネルギーの大量消費と都市化の進行に起因した大気汚染及び黄砂問題は益々深刻化している。黄砂と大気汚染物質は我が国に同時に飛来するケースが多いが,国際共同研究体制が十分ではないため,由来の違いや飛来している間に生じる両者の反応に関する知見は極めて少なかった。 本研究では,アジア大陸に面する本学能登半島大気観測ステーションを本拠地とし,黄砂発祥地及び飛行ルート上にある蘭州,北京,ソウルで黄砂と大気汚染物質を観測し,曝露チャンバーを用いたモデル実験の結果に合わせて,それらの相互作用機構を明らかにすることを目的とした。 本年度は,昨年度に続き金沢大学能登半島大気観測ステーションと蘭州大学半乾燥地域研究所で,PM2.5を夏季(7月から9月)と冬季(12月から1月)に分けてそれぞれ2週間捕集した。同時に窒素酸化物,イオン酸化物及びオゾン濃度の測定を行った。中国の暖房期間中における大気中PAH濃度は,中国の蘭州では28.9 ng/m3であり,日本の輪島では0.49 ng/m3であった。同じバックグラウンド地域においても,蘭州の大気中PAH濃度が輪島のそれらより約60倍高く,暖房期における中国北部都市の大気汚染の深刻さが再び伺われた。本年度はさらに,北京(中国環境科学院)と韓国の清州(忠北大学校)においても同様な調査を行った。また,摸擬チャンバーを用いた黄砂への曝露実験では,遮光条件において,PAHsと黄砂との間に,弱いながら物理吸着を示すことが分かったが,黄砂によるPAHsの分解が起こらなかった。光照射(254nm)の条件下では,中性,酸性溶媒の中,いずれもPAHsの光化学分解が確認された。生成物は水酸化体,ニトロ体及びキノン体であった。しかし,光照射の条件では,PAHs並びにそれらの生成物は黄砂への吸着現象が確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,計画通りの化学分析と曝露実験を順調に行った。さらに,次年度に予定していた韓国でのサンプリングについての予備調査を実施したためである。
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今後の研究の推進方策 |
今後,PM2.5及びガス状大気汚染物質の捕集地点を,計画通りの韓国清州での本番調査を始める予定である。昨年度と同様に捕集及び化学分析を行い,大気汚染物質の国及び地域別の汚染現状を把握しながら,多環芳香族炭化水素と黄砂との相互作用を続けて評価し,得られた反応生成物について,反応速度及び反応条件(摸擬大気条件)のもと,反応メカニズムを探る。
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