研究課題/領域番号 |
17K08389
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
肥田 重明 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (10345762)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 常在細菌 / 免疫 / アレルギー / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
黄色ブドウ球菌由来及びビフィズス菌由来の分泌タンパク質について、LPSなどの免疫賦活分子を発現しない変異型の大腸菌を用いて、これまでにクローニングした分子のリコンビナントを作成した。これらの分子について、野生型マウスやTLR2/TLR4遺伝子欠損マウス由来の樹状細胞やマクロファージを用いて検証をおこなったところ、ほとんどの分子で通常の大腸菌を用いた場合に比べ、LPSなどの菌体成分による免疫応答は、起こらないことを確認した。また、レアコドンを考慮して、発現効率を上げた変異型大腸菌を作成し、新たにリコンビナントタンパク質を作成する系を構築した。 マウスの生体内にはセンサー分子を発現している自然免疫担当細胞は少数しか存在しないため,骨髄細胞よりGM-CSF,M-CSF,IL-3などの各サイトカインを用いて、樹状細胞,マクロファージ,マスト細胞,好塩基球を培養して解析を行った。これまでの黄色ブドウ球菌由来分子による2型免疫応答・アレルギー反応促進分子は同定できたが、自然免疫細胞に存在する受容体センサー分子については、チロシンキナーゼ阻害剤を用いて、主要なシグナル伝達分子を想定し、現在同定を試みている。また、ビフィズス菌由来分子については、リコンビナントを作成した分子群から、免疫活性化分子が数種類見つかった。ビフィズス菌培養上清にも免疫活性化作用を持つ分子の存在も明らかになったことから、上清をHPLCなどを用いて分画し、来年度中に質量分析などを用いて同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質の欠点であるLPSなどの細菌由来分子の混入を最小限にするために、LPSを持たない変異型大腸菌や枯草菌を用いたリコンビナントタンパク質発現系を構築した。またタンパク質発現量の効率を上げるため、レアコドンの補充などを行い変異大腸菌を作成した。これにより、LPSなどによる免疫応答を最小限にすることができた。受容体センサー分子の同定には至っていないが、候補分子の遺伝子クローニングは既に行っている。以上のことから、計画していた実験系が確立できたことに加え、実験の進展についても概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
大きな研究計画の変更はない。常在細菌である黄色ブドウ球菌とビフィズス菌の分泌タンパク質、および膜表面上に存在するタンパク質などに注目し、追加でさらに遺伝子をクローニングし、リコンビナントタンパク質の作成を行う。 既に作成した免疫活性化作用を持つ分子については、その受容体との結合と細胞機能活性化の両方の実験系を用いて候補受容体分子の中から同定する。また、マウスにin vivoでリコンビナントタンパク質を投与し、T細胞の活性化、IgGやIgEの産生について観察し、さらに種々の遺伝子欠損マウスを用いて同様の実験を行うことで、生体内での生理的な意義や機能についても、詳細に解析する。 in vitroの実験では、骨髄由来マクロファージや樹状細胞、マスト細胞、好塩基球を培養し、これらの自然免疫細胞を用いてシグナル伝達系について解析し、アレルギーなどの慢性免疫疾患の治療標的の同定や創薬に応用できるかについても検証を加えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に作成を予定していた遺伝子変異マウスと新たに追加で遺伝子変異マウスを共同研究先の外部機関から導入するために、マウスの輸送費・微生物検査・検疫費用にかかる経費を平成30年度にまわした。また、ATCCなどから、追加で別の細菌種の購入を合わせて行う。研究計画に大きな変更はないが、各種リコンビナントタンパク質の作成、すでに導入済みの種々の遺伝子欠損マウスの維持管理費、これらのマウスの骨髄より細胞を培養する試薬や血清の購入を予定している。また、遺伝子発現の変化を定量するためのrealtime PCRに使用する試薬類、分子生物学的実験に使用する酵素類、タンパク質ブロットやフローサイトメトリーに使用する抗体は、本研究の遂行に必須の試薬であり、数十種類を年間を通じて使用していることから、昨年度に購入しなかった試薬を必要に応じて継続して追加購入する。
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