研究実績の概要 |
胆道がんの最大の危険因子である胆石症の70%をコレステロール胆石症が占めている。コレステロール胆石の形成は段階的に進み、様々な因子によって制御されている。申請者らはダイオキシン受容体として知られているAryl hydrocarbon Receptor (AhR)がコレステロール胆石形成の促進因子である可能性を見出した。そこで本研究では、胆石誘導食を負荷した肝臓特異的AhR欠損(AhR LKO)マウスの解析を通じて、肝臓AhRに依存したコレステロール胆石形成メカニズムの解明を試みた。 16週齢のAhR LKOおよびControlマウスに胆石誘導食 (コレステロール1.25%, コール酸0.5%, 飽和脂肪15%含有)を6週間負荷し、解析を行った。その結果、胆石誘導食を負荷したAhR LKOマウスの胆嚢内のコレステロール胆石形成率(16%)は、Controlマウス(60%)に比較して有意に低いものであった。そこで、胆汁成分(コレステロール、胆汁酸、リン脂質)濃度について測定したところ、胆石誘導食を負荷したAhR LKOマウスの総胆汁酸濃度の増加が認められた。一方、胆汁コレステロール及びリン脂質濃度において両群間に違いは認められなかった。また、胆石誘導食を負荷したAhR LKOマウスのコレステロール飽和度(CSI)は、Controlマウスのそれに比較して有意に低いものであった。AhR LKOマウスの総胆汁酸濃度の増加に伴い、1日あたりの胆汁酸排泄量の増加が見られた。、さらに、AhR LKOマウスの血液および肝臓脂質含量を測定したところ、AhR LKOマウスの肝臓総胆汁酸含量の低下および血中総胆汁酸濃度の増加が認められた。これらのことから、肝臓AhRの欠損は胆汁酸の恒常性に維持に関与していることが示唆された。
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