申請者らはダイオキシン受容体として知られているAryl hydrocarbon Receptor (AhR)がコレステロール胆石形成の促進因子である可能性を見出した。本研究では、肝臓AhRによるコレステロール及び胆汁酸代謝制御機構の解明を通じて、コレステロール胆石形成の新たなメカニズムを明らかにする。 これまでの研究において、胆石誘導食を給餌した肝臓特異的AhR欠損(LKO)マウスにおけるコレステロール胆石形成率はControlマウスに比較して有意に低いものであった。また、LKOマウスにおいて肝臓から胆管を介した胆汁酸排泄が有意に増加していることを明らかにした。 胆石誘導食を給餌したマウスは、胆石とともに高コレステロール血症を呈する。肝臓AhR遺伝子の欠損は、胆石誘導食に伴う血中コレステロール濃度の増加を著しく抑制した。また、LKOマウスにおけるLDLコレステロール濃度の低下が見られた。一方、HDLコレステロール濃度において肝臓AhR遺伝子の欠損の影響は認められなかった。次に、肝臓コレステロール含量を測定したところ、LKOマウスにおいて総コレステロール含量、コレステロールエステル含量の増加が見られた。肝臓コレステロールエステルは、トリグリセリドとともにVLDLとして血中に分泌されることより、VLDL分泌関連遺伝子の発現量を測定したところ、LKOマウスにおいてMicrosomal triglyceride transfer protein(Mtp)発現量の有意な低下が見られた。したがって、AhRはMtp発現制御を介してVLDL分泌制御に関与していることが示唆された。以上の結果より、肝臓AhRは、コレステロール・胆汁酸排泄の方向性を制御していることを明らかにした。
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