研究課題/領域番号 |
17K08393
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
辻 勉 星薬科大学, 薬学部, 教授 (00143503)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マクロファージ / 血小板 / エンドトキシン / 腫瘍壊死因子 / インターロイキン6 / 免疫調節 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究で、細菌性エンドトキシン (Lipopolysaccharide, LPS) に対するマウス骨髄由来マクロファージの反応に血小板が抑制的に働くことを見出した。本年度は、この抑制反応の機序を明らかにするため、ヒト単球・マクロファージ様細胞株であるMM6細胞を用いて、ヒト血小板由来成分のマクロファージ安定化作用についてさらに検討を加えた。MM6細胞はLPSに対して感受性が高く、低濃度のLPSに応答しサイトカイン産生能を有する。一方、ヒト末梢血から血小板を分離し、凍結融解、超音波処理を施した後、遠心分離によって可溶性画分を取得し、この画分のマクロファージに対する効果を調べた。まず、MM6細胞を活性型ビタミンD3(10 ng/mL)の存在下で72時間培養することにより細胞をプライミングした後、ヒト血小板可溶性画分を加え、さらに24時間培養を継続した。その後、E. coli 由来のLPS(1 EU/mL)を加え、3時間あるいは24時間後までに培養上清に放出された腫瘍壊死因子 (TNF-α) およびインターロイキン (IL)-6 等のサイトカインをELISA法によって定量した。その結果、ヒト血小板可溶性画分に TNF-αおよびIL-6の産生を顕著に抑制する効果があることが明らかになった。本年度の研究により、血小板由来成分のマクロファージ安定化作用がマウス骨髄由来マクロファージばかりでなく、ヒトの単球・マクロファージ系の細胞においても同様に観察されることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、血小板由来の可溶性成分によるマクロファージ安定化作用について、炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-6の産生抑制を指標として研究を進めた。その結果、マウス骨髄由来マクロファージばかりでなく、ヒトMM6細胞においてもLPSに反応して誘導されるサイトカイン産生が抑制されることが明らかになった。また、ヒト血小板の超音波処理により遊離する可溶性画分に活性因子が含まれる可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究から、マクロファージ安定化作用を有する成分が、ヒト血小板の凍結融解および超音波処理後の可溶性画分に回収されることが明らかになったので、次年度はこの画分を出発点として活性成分の精製を進める予定である。また、活性成分の精製を進めつつ、活性因子の生化学的性状の解析も進めたい。末梢血の血小板に加え、巨核球系白血病細胞株であるCMK86細胞の利用も検討する。マクロファージ安定化作用をもたらす因子については、高分子量のタンパク質性成分であることが予備的実験から予想されているので、エクソソームとの関連性や高分子量糖タンパク質である可能性も考慮する。限外ろ過や各種クロマトグラフィーなどの手法により精製を進め、マクロファーシのLPS反応性に対する抑制作用を指標として精製を進める予定である。同時に細胞接着促進活性との異同についても検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養の計画の一部が次年度に変更になったため、培養用血清および培養液の一部を次年度初めに購入する予定である。
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