研究課題
昨年度までの研究により,マウス骨髄由来マクロファージ及びヒト単球系細胞株Mono-Mac-6(MM6)のエンドトキシン(LPS)刺激により誘導される腫瘍壊死因子(TNF-α)やインターロイキン6 (IL-6) などのサイトカイン産生が血小板あるいはその抽出液によって抑制されることを明らかにした.本年度は,アッセイ系の効率化を目指した改良法の開発および血小板由来の物質による単球・マクロファージの安定化作用の解析を行った.LPSは,宿主免疫細胞に発現するToll様受容体4(TLR4)刺激及び引き続くNF-κBの活性化を介してTNF-αやIL-6の産生を促進することが知られているので,NF-κB 応答性配列を利用したレポーターアッセイの開発を検討した.具体的には,トゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris) のルシフェラーゼ遺伝子の上流にNF-κB 応答性配列を配置したレポータープラスミドをMM6細胞に導入した細胞株MM6/NF-κB-NLを作製した.この細胞を用いることにより,これまで36時間以上かかっていたLPSに対する細胞応答の測定が約3時間にて可能になり,大幅な所要時間の短縮が達成された.また,血小板抽出液の抑制効果を調べる際に,昨年度までは単球・マクロファージと24時間培養していたが,これを1時間に短縮しても,応答性の十分な抑制効果が観察された.次いで,この抑制反応に関与する分子についての情報を得るために,特異抗体を用いて血小板抽出画分の吸収実験を行った.使用した抗血小板膜タンパク質抗体のうち,抗CD42b抗体で吸収した場合に抑制効果の減弱が認められた.この結果より,血小板膜タンパク質CD42bあるいはCD42bを含む複合体が単球・マクロファージの安定化作用に寄与している可能性が示された.
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Biol. Pharm. Bull.
巻: 42 ページ: 982-988
10.1248/bpb.b18-01024
巻: 42 ページ: 937-943
10.1248/bpb.b18-00935