研究課題/領域番号 |
17K08394
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
市川 智恵 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (60383288)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Trichosporon / 菌体表層分子 / 接着性 / 病原因子 |
研究実績の概要 |
本研究は、健常者にも常在・定着する病原性酵母の共生・感染メカニズムを明らかにすることが目的である。トリコスポロン症の原因菌であるTrichosporon asahiiには、多様なコロニー形態があり、white株(W)、off-white株(O)、yellowish-white株(Y)が存在する。コロニー形態を変えることで感染しやすくなるメカニズムがあるのではないかと考え、コロニー形態による病原性の違いと、病原性が高いコロニー形態に選択的に発現するタンパク質の機能解析を進めている。今年度は、高接着性のO-type株に特徴的に発現するタンパク質についてさらに解析を行なうために、まず、菌体と結合するヒト生体分子の探索を行なった。宿主細胞で接着性に関与すると考えられる分子や、血中成分であるタンパク質をピックアップし、菌体とのプルダウンを行なったところ、複数の分子の結合が認められた。そこで、菌体表層から高分子を抽出し、表面プラズモン共鳴法を用いてT. asahii菌体表層分子とヒト生体分子との相互作用を解析した。その結果、菌体プルダウンで結合性が認められた分子のうち、いくつかは菌体表層分子が宿主タンパク質と相互作用していることが示された。また、T. asahiiが赤血球を凝集させることや溶血することを示した。これにもコロニー形態による差が存在し、凝集をおこすコロニー形態は、接着性も高いことが示された。さらに、口腔内酵母の分離では、一定数の酵母が得られ、Candida属菌種についてプラスチック素材や培養細胞に対する接着性、細胞傷害性の違いを解析できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宿主血清分子や接着性分子と、T. asahiiとの結合解析が予定より進み、相互作用が確認できた。T. asahiiの赤血球凝集・溶血能の解析、および、Candida属菌種の接着性・細胞傷害性の解析はそれぞれ論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
T. asahiiが溶血することによる病原性についてさらに解析を進め、ヘモグロビンとの相互作用を解析する予定である。また、T. asahiiの高接着株で強く発現するTAAと、今年度に同定したヒト生体分子について、次年度は両者の結合性を解析する。TAAが接着に関与するか、赤血球凝集性にTAAが関与するかどうかを解析する。さらに、その機能解析を進め、感染メカニズムにおける役割を明らかにする。また、TAAホモログ、あるいは類似タンパク質を検索し、他菌種における発現・役割を解析することで、菌種特異性についても明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、これから同定する予定の菌体表層タンパク質等の同定費用、ならびに抗体の購入費などに充当したいと考えている。前年度に引き続き、T. asahiiおよび口腔から分離したCandida属菌種を使用して病原因子探索を行うために、表面プラズモン共鳴法の試薬、宿主のリコンビナントタンパク質の購入、菌体由来分子のMALDI-TOF/TOF解析の費用として使用する。また、培養細胞を用いて、T. asahii分子の安定発現細胞株や、リコンビナントタンパク質の作製を試みるため、その培地や血清の購入にも使用する。また、成果発表のための学会参加費用、論文投稿料として使用する予定である。
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