トリコスポロン症の起因菌であるTrichosporon asahiiで見出される多様なコロニー形態のうち、white株(W株)、off-white株(O株)、yellowish-white株(Y株)を用いて、コロニー形態による病原性の違いと、病原性が高いコロニー形態に選択的に発現するタンパク質の機能解析を進めた。 今年度は、T. ashaii菌体と結合するヒトタンパク質についてさらに解析を行なった。ウシ胎児血清を用いて、血清中の菌体結合分子をスクリーニングした結果、複数の血清分子がT. asahii結合タンパク質として同定された。そこで、同分子のヒトホモログ分子を用いて結合を解析した。菌体のプルダウンアッセイあるいは菌体表層分子を用いた表面プラズモン共鳴法解析によりT. asahii菌体表層と結合するヒトの血清分子を同定することができた。 また、ヒトの組織や細胞との接着にも関与することが示唆されるグリコサミノグリカンへの結合も解析対象とし、ヘパリンに結合するT. asahiiの分子も同定した。W株とO株由来の細胞表層タンパク質を用いて結合性を比較した結果、W株のほうがよりヘパリンへの結合性が高い結果が得られた。およそ40kDaに検出されたT. asahiiのヘパリン結合タンパク質は仮想タンパク質で、機能は未知であった。またこの分子はW株に特徴的に発現し、コロニー形態に依存した発現を示しため、heparin-binding protein 1と命名し今後はその機能解析を行う予定である。
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