研究実績の概要 |
真菌は、喘息患者においてスギ、ダニに次いで陽性率が高い主要アレルゲンである。本研究は、成人喘息患者における真菌皮内テスト陽性率で高値を示す環境真菌、Aspergillus fumigatusおよびNeurospora crassaが産生する糖脂質の免疫細胞への分子メカニズムを解析することで、喘息発症の予防ならびに治療法の開発に展開するための基盤を構築することを目的としている。平成29年度は、以下のin vitro実験を行った。急性単球性白血病由来細胞株(THP-1)を用いて、Aspergillus fumigatusの主表層糖脂質である9-Me d18:24E,8E-C16h:0、9-Me d18:24E,8E-C18h:0およびNeurospora crassaの主表層糖脂質であるNeurosporaside曝露後のサイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、IL-12p70、TNF-α)産生についてreal-time PCR法により評価した。9-Me d18:24E,8E-C16h:0処理によって、IL-6は2.5倍、IL-8は2.0倍、TNF-αは2.5倍のmRNA発現量の増加が認められた。9-Me d18:24E,8E-C18h:0処理では、IL-1βは3.0倍、IL-6は15倍、IL-8は5.0倍、IL-12p70は4.0倍、TNF-αは6.0倍のmRNA発現量の増加が認められた。また、Neurosporaside処理では、IL-6 mRNAの発現量を3.0倍増加させたが、IL-1β、IL-8、IL-12p70、TNF-αmRNAの発現に対する影響は認められなかった。さらに、9-Me d18:24E,8E-C16h:0、9-Me d18:24E,8E-C18h:0は、THP-1におけるp44/42MAPKのリン酸化を有意に亢進させることを明らかにした。
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