研究課題
京都市において7月から11月までの5カ月にわたって1週間分ずつ毎月4週分(合計20週分)の大気粉塵をハイボリウムエアサンプラーを用いて石英繊維製フィルター上に捕集した。各粉塵について抽出液を調製し、リポポリサッカライド(LPS)とβ-グルカンを市販の測定キットを用いて測定した。また、水溶性イオンもイオンクロマトグラフを用い測定した。大気粉塵中のLPS、タンパク質などと喘息発作との関係を解析するため、2014年9月から2016年5月に京都市内の救急外来を受診し、喘息発作と診断された患者を電子カルテ情報から調査し、月ごとの喘息発作数に関するデータを得たるとともに、その結果と昨年度までに得ていた同期間に捕集した大気粉塵中のLPS、タンパク質の濃度などとの調査結果との関係を単回帰分析および重回帰分析により解析した。その結果、喘息発作件数と大気粉塵中のLPS濃度が有意な正の相関関係にあることがわかった。大気粉塵成分の炎症性サイトカイン誘導能をTHP-1改変細胞を用いて測定するため、試料溶液の調製法と前処理法について検討した。その結果、大気粉塵抽出液を遠心分離してフィルター繊維をできるだけ除いたのち、上清をセルストレーナーでろ過することで、抽出液中のLPSなどを損失することなくフィルター繊維を含まない粉塵抽出液を得ることができることがわかった。本方法を用いて炎症性サイトカイン誘導能測定用抽出液を調製し、凍結乾燥して誘導能測定用試料を得た。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に実施することを計画していた研究のほぼすべてを行うことができた。また、研究成果を学会において発表するとともに論文としてまとめ学術雑誌に投稿した。
昨年度大気粉塵を捕集した期間に医療機関の救急外来を喘息発作で受診した患者数を調査するとともにその結果と昨年度分析した大気粉塵中のLPS、β-グルカン、水溶性イオンなどとの関連を解析する。また、昨年度調製した大気粉塵抽出物について炎症性サイトカイン誘導脳を測定する。さらに、高濃度のLPSが検出された大気粉塵について、高濃度LPSの原因菌を解明するため、DNA抽出液を調製し細菌叢解析を行う。
平成29年度は、大気粉塵の炎症性サイトカイン誘導能の測定のための試料調整に時間がかかり分析する時間が少なく試薬の購入が予定より少なかった。本研究は平成30年度に実施する。
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