研究課題/領域番号 |
17K08399
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
小林 直木 摂南大学, 薬学部, 助教 (90532250)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | S1P / トランスポーター / 輸送体 / 赤血球 / MFSD2B |
研究実績の概要 |
赤血球から血漿中に放出されるスフィンゴシン1リン酸(S1P)は、リンパ組織から血液中へのリンパ球移動において必須の情報伝達物質である。私はこれまでに赤血球からのS1P放出が細胞膜の輸送体を介していることを明らかにしているが、その分子実体は不明のままであった。本研究では、遺伝学的な手法により赤血球S1P輸送体の同定を試みた。私は、赤血球前駆細胞株のMEDEP-E14細胞が、細胞内でS1Pを合成し、細胞外へと放出する活性を持つことを見出した。一方、MEDEP-E14細胞の親株細胞であるマウスES細胞においては、S1Pが細胞内で少量合成されるのにも関わらず、細胞外へは全く放出されなかった。私はこれらの細胞におけるS1P放出能の違いに着目し、マイクロアレイ解析を行ったところ、MEDEP-E14細胞において特に発現量の多い輸送体遺伝子としてmfsd2bを同定した。CHO細胞を用いたS1P輸送活性の測定により、MFSD2BはS1P輸送能を持つことを明らかにした。抗MFSD2B抗体を用いたウェスタンブロットにより、MFSD2Bがマウス赤血球に発現していることを確認した。MFSD2BによるS1P輸送へのイオン要求性を調べたところ、いずれのイオン濃度勾配も必要ないことが分かった。MFSD2Bに対するD85AおよびK413Aの変異導入によりS1P輸送活性が大きく減少したことから、これらの荷電性アミノ酸残基が基質輸送に重要な働きをしていると考えられる。さらに、MEDEP-E14細胞においてCRISPR/Cas9システムによりMFSD2B遺伝子を欠損させたところ、血漿中でのS1Pの運び屋であるアルブミンおよびHDLへのS1P輸送が大きく減少した。以上の結果から、MFSD2Bは赤血球における主要なS1P輸送体として機能すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画通りに、赤血球前駆細胞株のMEDEP-E14細胞において、新規S1P輸送体を同定できたことから。
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今後の研究の推進方策 |
S1P輸送体を介したS1P受容体の活性化機構を解明すると共に、新規赤血球S1P輸送体MFSD2Bの阻害剤スクリーニング系を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の予算において、ほぼ予定通りの金額を使用した。平成30年度は物品費・旅費・その他の費目で使用予定である。
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