研究課題/領域番号 |
17K08399
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
小林 直木 摂南大学, 薬学部, 助教 (90532250)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
2017年度までの研究において赤血球のS1P輸送体MFSD2Bを同定できたことから、2018年度はMFSD2Bの機能解析系の構築とS1P輸送体阻害剤のスクリーニングに必要となる簡便なS1P輸送体活性測定系の確立を目的として、HEK293細胞を用いた蛍光標識S1P(NBD-S1P)の輸送活性測定を試みた。スフィンゴシンキナーゼを安定発現させたHEK293細胞(HEK293/SphK)にNBD-スフィンゴシンを添加したところ、細胞内でNBD-S1Pが合成されたが、S1P輸送体を発現させていないHEK293/SphK細胞から相当量のNBD-S1Pが細胞外へ放出されることが分かった。この内因性のNBD-S1P放出はMFSD2Bの活性を測定する際にはバックグラウンドを上昇させてしまう。そこで、HEK293/SphK細胞において何らかの内因性の輸送体がNBD-S1Pの放出に関与していると仮定し、NBD-S1P輸送体の探索を行った。多剤排出輸送体として知られているいくつかのABC輸送体をHEK293/SphK細胞に強制発現させたところ、ABCC1発現株においてNBD-S1P放出量が増加した。また、siRNAによりHEK293/SphK細胞のabcc1遺伝子を発現抑制したところ、NBD-S1P放出量が大きく減少した。これらの結果から、HEK293/SphK細胞に発現している内因性のNBD-S1P輸送体はABCC1であることが強く示唆された。そこで、CRISPR/Cas9システムによりHEK293/SphK細胞のabcc1遺伝子を欠損させたところ、HEK293/SphK細胞からのNBD-S1P放出量が大きく減少したことから、ABCC1はHEK293/SphK細胞における内因性のNBD-S1P輸送体であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HEK293細胞を用いたNBD-S1Pの輸送活性測定が概ね順調に進んだため。
|
今後の研究の推進方策 |
HEK293/SphK細胞のabcc1欠損株にMFSD2BなどのS1P輸送体を安定発現させることでバックグラウンドの低い高感度のS1P輸送体活性測定系を確立し、S1P輸送体阻害剤のスクリーニングを進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね研究は予定通り進んでいるが、一部の消耗品を2019年度に購入することにしたため。したがって、次年度使用額は消耗品費として使用する。
|