研究課題/領域番号 |
17K08401
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
杉原 数美 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20271067)
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研究分担者 |
清水 良 広島国際大学, 薬学部, 講師 (00570491)
太田 茂 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 名誉教授 (60160503)
渡部 容子 日本薬科大学, 薬学部, 助教 (60628056)
田山 剛崇 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (80389121)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 性差 / 系統差 / 薬物代謝酵素 / 成長ホルモン |
研究実績の概要 |
薬毒物による薬効・毒性発現や疾病などに性差があることが知られているが、性差発現メカニズムの多くが未解明である。本研究では、性差の知られている薬毒物代謝酵素cyp分子種を指標として、薬毒物代謝酵素アルデヒドオキシダーゼを始め性差の認められている薬毒物代謝酵素の性差発現機構の解明を行っている。 2017年度はマウスの系統差および性差をC57BL/6NとDBA/2のマウスを用い、AOX1およびAOX3の各分子種の発現などを調べ、性差および系統差発現にはAOX3の発現量が大きく影響していること、estradiol, testosteroneおよびgrowth hormoneなどの他、bisphenol A, DESなどの環境化学物質の影響を明らかとした。性ホルモンの影響も雌雄での反応が異なっており、制御系が雌雄で異なることが予測される。 2018年度は、マウスでアルデヒドオキシダーゼ活性の系統差が著しいC57BL/6NとDBA/2およびこれらのF1であるB6D2F1マウスを用いて、AOX発現の遺伝的影響をみた。B6D2F1マウスでも雄>雌の性差が認められたが、活性は両系統マウスの中間の値を示した。mRNAおよびwestern blotによりAOX1とAOX3のうちAOX3の変動が大きいことを観察している。これら発現制御機序を調べるために、マウス肝癌細胞Hepa1-6細胞を用いてホルモン類、環境化学物質による影響を調べている。growth horomoneによるAOX3の発現亢進やcyp2c9の低下などがある程度観察されるが、in vivoに比べ大きな変動を得ることが出来ていない。そこで、2019年度はマウス肝初代細胞を用いた評価系による調査を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薬物代謝酵素アルデヒドオキシダーゼ活性の性差発現の原因として、AOX3分子種の発現があることを確認した。性ホルモン、成長ホルモンおよび内分泌かく乱物質などの影響で、AOX1は変動せず、AOX3のみの変動が認められ、内分泌系による発現制御現象が認められる分子種であることを確認している。in vivoでのホルモン投与ではフィードバックなどの影響がでて、メカニズムなどを解析しにくいため、細胞を用いた系を開発しているところだが、ある程度の変動を観察することはできるが、適切な細胞系が見出せていない。2019年度はin vitro評価系を用いた研究の進展を図りたい。 2018年度の進捗自己評価として、やや遅れているを選択した。2018年7月豪雨による被害とその後の断水、交通障害や復興支援などがあり、大学も1ヶ月休講となった。研究も数ヶ月間休止状態となったため、本来の進展予測より遅延したと自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マウスでC57BL/6NとDBA/2とそれらのF1であるD2B5F1マウスでのAOX発現の性差、系統差について、AOX3上流域の調査検討および転写因子などを調べ、内分泌系による調整と遺伝的な影響を調べる。マウス肝癌細胞系では、良好な結果が得られていないので、マウス初代肝細胞を用い、ホルモン類、内分泌かく乱物質による遺伝子変動を調べることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は7月に豪雨災害があり、広島県内全般的に大きな被害を受けた。研究代表者の研究施設のある呉市でも2-3週間におよぶ断水被害と災害復旧作業などで、研究の進行に多大な支障を生じたため、次年度使用額が生じた。本年度、遅れを取り戻すように研究を進展させる予定である。
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