研究課題/領域番号 |
17K08403
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研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
小川 和加野 第一薬科大学, 薬学部, 准教授 (90397878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細菌 / 抗菌薬耐性 / 転写制御 / 多剤排出ポンプ / 発現解析 |
研究実績の概要 |
肺炎桿菌は抗菌薬耐性化が臨床現場で問題になっている細菌のひとつである。申請者は2成分転写制御因子(KdrAB)の変異が多剤排出ポンプkexDの発現を上昇させ、その結果、多剤耐性化が生じるという現象を以前に見出していた。本課題ではKdrABがkexD遺伝子周辺域と直接相互作用しているどうかについて明らかにすることを目指している。また、KdrABの肺炎桿菌における生理的な意義を明らかにするため、この転写調節因子が発現調節を行っている遺伝子をRNAシーケンス解析により明らかにすることを目指している。 まず平成29年度はゲノムとKdrAとの相互作用を調べるために、KdrA精製用のプラスミドの構築を行うことを目指した。この過程で発現ベクターの検討を行う必要が生じたため、現在、新たなプラスミドを構築中である。 RNA発現解析は当初より、外注で行う予定にしていた。連携研究者の助言により、データ解析においても指導等が受けられるという理由から、広島大学自然科学研究支援開発センターに外注することを決定した。現在、解析を行うためのデータベースの構築作業を行っている。 KexDの発現上昇はkdrBの1塩基置換により生じている可能性が高い。しかし、この変異がKdrAB系の機能を亢進しているのか、機能不全を引き起こしているのかは明らかではない。 KdrAとゲノムとの相互作用実験では、この相互作用が引き起こす多剤排出ポンプKexD発現上昇との関連を、RNA発現解析ではKdrB変異が引き金となり細胞全体に与える影響を 調べたいと考えている。そして、KdrABが肺炎桿菌で果たしている役割を明らかにすることで、多剤排出ポンプ発現亢進までの情報入力を遮断し、抗菌薬耐性化を抑制する化合物の探索に繋げることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成年度はKdrAを精製するためのプラスミドを構築し、精製までを行う予定だった。プラスミドの構築はできたものの、発現量が少なく精製の段階で問題が発生した。そのため、現在、ベクターを変更して、新たにプラスミドを構築している。 RNA発現解析については、広島大学自然科学研究支援開発センターに外注することを決定した。どのような状態のサンプルを調製すればよいかなどについても、相談し、おそらく、従来通りの調製方法で問題は生じないだろうということが判明した。 また、解析を実施するにあたり、肺炎桿菌のオープンリーディングフレームについてのデータベースが必要であるとのこと指示を受けた。しかし、解析したい変異株はゲノム情報が明らかになっていない株に由来している。親株については以前にゲノム変異解析を行ったことがあるため、連携研究者の協力の元、昨年度は断片情報を96本のContigにまで繋いだ。現在はこのContig情報を元にデータベースを構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
RNA発現解析については、本年度中に実施可能である。解析についても、サンプルを調製し、シーケンサーにかけてもらう時期によるが、ある程度のところまで実施可能であると考えている。発現解析を実施する広島大学自然科学研究支援開発センターへの支払いや、サンプル調製に必要な試薬等の購入の関係から、現在、連携研究者を研究分担者に変更し、予算配分を行うことを検討している。 プラスミド構築については、構築したプラスミドではうまく発現させられなかった等の問題が発生したため、現在、構築をやり直している。プラスミドの構築自体は可能であったため、このプラスミドの構築が致死的であるとは思えない。複数種類のベクターを利用して、プラスミドを構築し、その中で最もよいものを利用してKdrAの精製を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時にサーマルサイクラーの購入を計上していたが、大学に新規に備品としてサーマルサイクラーが導入されたため、購入の必要がなくなった。しかし、発現解析に想定より余分に経費がかかりそうであるため、余剰分はそちらで使用する。また、申請時に計上していたPC類の購入も、発現解析にかかる経費と、現状のPCでの発現解析結果のデータ処理能力を見てから本経費で購入するかどうか決定することにした。
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