研究課題
不活化肺炎球菌をツールにRSV肺炎形成の初期のメカニズムを明らかにして、制御素材としての可能性の探索を目的とした。初年度はツールである不活化肺炎球菌のキャラクタライズに注力した。BALB/c雌性マウス(6週齢)に麻酔下で、RSV A2株を経鼻感染する1, 3および5日前に不活化肺炎球菌を経鼻投与し、感染翌日に取得した肺胞洗浄液(BALF)中の各因子を解析することを基本とした。感染実験に先立って、肺炎球菌サンプルへのホルマリンのコンタミネーションの可能性をシッフ試薬試験により否定できた。不活化肺炎球菌自体は超音波で破砕するとTNF-α抑制活性が顕著に低下し、菌体の構造保持が重要であることが判明した。また抗原性などが異なる4種類の肺炎球菌株の応答性の相違に大差はなかった。二年目は、肺炎形成に関与する細胞種もしくは因子の探索に取り組んだ。病理組織学的に浸出細胞の幼若化を見出し、FACS解析により核酸合成の亢進を確認した。また肺胞マクロファージの比率が高く、そのアポトーシス抑制作用や抗ウイルス活性に関わるRANTESの感染初期でのレベル上昇を見出した。さらにI型インターフェロンの誘導を否定し、抗RSV作用は特異的な細胞性免疫応答によることが再確認できた。最終年度は、標的細胞を明確にするため、培養マクロファージRAW264.7細胞を用いて検証した。なお、当初陰性対照と設定した酸化チタンは、RAW細胞に対する応答性・形態学的変化から不適当であった。RSV感染RAW細胞では、不活化肺炎球菌は貪食能に影響し、かつRANTES上昇を再現できた。本研究を通じて、RSV感染初期の病態形成にはマクロファージへの作用が鍵であり、RANTES産生応答が重要であることが強く示唆された。一方で、不活化肺炎球菌の抗RSV活性を増強出来ず、感染防御素材としてはさらなる検討が必要であることが分かった。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Toxicology Report
巻: 6 ページ: 514-520
10.1016/j.toxrep.2019.05.004