研究課題/領域番号 |
17K08407
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
秋山 晴代 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (50420229)
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研究分担者 |
中村 亮介 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (50333357)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / IgE / 架橋活性 / 食物アレルゲン / EXiLE法 |
研究実績の概要 |
近年、海洋等に廃棄されるプラスチックが細片化されマイクロプラスチックとなり、海洋生物の体内に取り込まれることが問題になっている。プラスチックの中には、種々の物質を吸着させる性質を持つものがあり、環境汚染物質等を吸着したマイクロプラスチックを摂取した生物をヒトが食することに対する不安が増している。 一方、アレルギー反応は、多価のエピトープを持つアレルゲンにより複数分子のIgE抗体が架橋されることが引き金となっている。そこで本研究では、食物アレルゲンが環境中のマイクロプラスチックに結合することにより、単量体で存在する場合に比較してどのような架橋活性の変化が起こるかを解析することを主な目的にしている。 昨年度は、溶液中に単量体で存在する際には架橋活性を持たないアレルゲン分子が、ポリスチレン製のマイクロプラスチックビーズに結合することで、十分に強い架橋活性を誘導できるようになる例を、培養細胞のルシフェラーゼアッセイを用いた独自の評価系を用いて示した。今年度は、ポリスチレン製のプラスチックプレートに抗原を吸着させても同様の結果が得られるかどうかを確認した。 その結果、抗原を溶液(培地)中に溶かした場合と、プラスチックプレートに固相化した場合とでは、後者の方がより強く応答することが分かった。抗原の対数濃度(0.1~10000 ng/mL)とルシフェラーゼ活性のfold increaseとの相関係数は、前者が-0.50であったのに対し、後者は0.99であった。これは、前者の応答性が至適濃度を持ついわゆるbell-shape型であったのに対して、後者は濃度依存的に応答性が増加し続けたことによる。この結果は、抗原がプラスチック等の固相に吸着されると、溶液中に単量体で存在する場合とは異なり、IgEと抗原との反応が高濃度でも減弱しなくなる可能性を示唆していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、架橋刺激に関与するIgEのみを検出できる唯一のin vitro試験法であるEXiLE法を用いている。本法では、マスト細胞(RS-ATL8細胞)にIgE抗体の感作を行うが、この際に魚アレルギーなどの食物アレルギー患者血清が必須となる。 昨年度に引き続き魚アレルギー患者血清を収集したが、いずれも抗体価が低く(CAP値:class1~2)、EXiLE法に供しても応答性が低かった。日本人の魚アレルギー患者数が、卵アレルギーなどに比べ少ないことも血清入手を困難にしている。そのため、当初の予定どおりに検討が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、魚に限らず他の食物アレルギー等の患者血清を用いて検討を行う。 マイクロプラスチックの粒子径及び材質により、各種食物アレルゲンの架橋活性に変化が見られるかを評価する。粒子径数μm~1mmのポリスチレン材質のマイクロビーズに、魚類をはじめとした各種食物より抽出したタンパク抽出液を吸着させ、その架橋活性をEXiLE応答性により評価する。また、プラスチックプレートへの固相化法も行い、応答の変化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き魚アレルギー患者血清を収集したが、いずれも抗体価が低く、EXiLE法に供しても応答性が低かった。日本人の魚アレルギー患者数が、卵などに比べ少ないことも血清入手を困難にしている。当初の予定どおりに検討が進まなかった。今年度は、魚に限らず他の食物アレルギー等の患者血清を用いて検討を行う。
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