近年、マイクロプラスチック(MP)は、世界各地の海域で大量に浮遊していることが確認されている。プラスチックの中には、種々の物質を吸着させる性質を持つものがあり、環境汚染物質等を吸着したMPを摂取した生物をヒトが食することに対する不安が増加している。一方、アレルギー反応は、多価のエピトープを持つアレルゲンにより複数分子のIgE抗体が架橋されることが引き金となる。そこで本研究では、食物アレルゲンが環境中のMPに結合することにより、単量体で存在する場合と比較してどのような架橋活性の変化が起こるか解析することを主な目的にしている。 これまでの検討により、抗原を溶液中に溶かした場合と、ポリスチレン製のプラスチックプレートに固相化した場合とでは、後者の方がより強い架橋活性を誘導できるようになることを、細胞膜上での架橋を定量化するEXiLE法を用いて示した。そこで今年度は、マイクロプラスチックビーズへの抗原吸着について検討を行った。2.5%(w/v)ポリスチレンビーズ(粒径0.1、0.2、0.5、1、2、4.5、10、25、45、90 μm)懸濁液に抗原溶液をそれぞれ加え、4℃または室温で吸着させたところ、吸着率は7.9±5.7 %、24.4±3.9 %と、室温の方が吸着率は高かった。また、粒子径0.5~2 μmでは温度にかかわらず吸着率が高く、特に2 μmで高かった。これまでの結果は、抗原がプラスチックの固相に吸着されると、溶液中に単量体で存在する場合とは異なり、IgEと抗原との反応が高濃度でも減弱しなくなる可能性を示唆している。一方、ビーズの場合は、粒子径や温度条件により抗原吸着率が変動することから、環境中のMPの架橋活性についてはより詳細な検討が必要と思われた。
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