最終年度においても標準投与量服用患者と、低用量服用患者数を蓄積し、各々の患者の血中濃度測定と遺伝子多型解析を実施した。有効性と副作用発現のバランスを考慮して治療を実施した場合、レンバチニブは40~50ng/mLの間の血中濃度にターゲット濃度があり、ボスチニブは63ng/mLがターゲット濃度である可能性が示唆された。投与開始前の遺伝子多型解析も有効であり、レンバチニブはMRP2蛋白の遺伝子多型、ボスチニブは核内受容体の遺伝子多型解析が初回投与量設計に有効と考えられたが、高齢者に対しては、標準投与量で開始するよりも、低用量で開始したほうが、治療中断を回避することができるため、初回は低投与量から開始し、段階的に用量を増加させるdose-escalation法を行い、その後、投与開始8日目の血中濃度から増量を考慮することが有効とする結果が得られた。 患者年齢を59歳以下の群、60~74歳の群、75歳以上の群の3群に分けて、それぞれの分子標的抗がん剤の血中濃度、1日投与量の違いについて検討した。高齢になるほど、同じ投与量でも血中濃度が高値なり、同じ血中濃度を得るには、高齢者の投与量を下げる必要があることも確認できた。この結果を基に今後前向きに臨床で実践する必要がある。
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