研究課題/領域番号 |
17K08409
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
久保 義行 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20377427)
|
研究分担者 |
赤沼 伸乙 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30467089)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 物質輸送 / 血液網膜関門 / 排出 / トランスポーター / カチオン |
研究実績の概要 |
薬物の吸収や分布、排泄に重要な薬物輸送機構を担うトランスポーター分子の研究は、薬物送達法開発や薬物動態予測の精密化に直結し、これによってアンメットメディカルニーズの解消などが期待される。近年、血液網膜関門では新規薬物輸送機構の存在が次々と示され、それら特異的機能の創薬応用には、輸送機構群の全体的把握と各機構の詳細な分子機序解明が肝要となる。本申請課題では、血液網膜関門カチオン性薬物エフラックス機構を取り挙げ、その機能特性や分子機序の解明を目的とした。平成29年度は、研究目的「①新規薬物輸送機構と機能特性」に関連する研究計画「In vivoにおける薬物エフラックス機構の新規探索」および「薬物エフラックス機構のin vitro機能特性評価」を実施した。In vivo解析の結果、血液網膜関門において、1-methyl-4-phenylpyridinium (MPP+)を基質とするエフラックス機構が存在することが示唆された。MPP+は、神経毒性を有するカチオン性化合物であることから、以上のin vivo解析の結果は、このカチオン性化合物エフラックス機構の生理的および薬理学的重要性を支持するものである。さらに、in vitro解析においては、内側血液網膜関門および外側血液網膜関門におけるMPP+エフラックス輸送が担体介在輸送であることが示唆された。転写産物発現解析の結果、内側および外側血液網膜関門には、OCTN1 (SLC22A4)やOCTN2 (SLC22A5)、PMAT (SLC29A4)、MATE (SLC47A1)などのmRNA発現が示唆された。また、in vitro輸送特性解析の結果、MPP+エフラックス輸送の膜電位感受性および、ナトリウムイオンおよびクロライドイオン、pH非感受性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究目的の「①新規薬物輸送機構と機能特性」に関して、マイクロダイアリシス法およびretinal uptake index (RUI)法を用いた解析を実施した。その結果、bulk flow markerである[14C]D-mannitolに比して、[3H]MPP+がより早い消失特性を示したことから、カチオン性化合物である]MPP+を基質とするエフラックス機構が血液網膜関門に存在することが示唆された。 In vitro解析においては、TR-iBRB2細胞と初代培養RPE細胞をそれぞれ内側および外側血液網膜関門のモデル細胞として採用した。In vitro輸送解析の結果、TR-iBRB2細胞および初代培養RPE細胞における[3H]MPP+輸送が担体介在輸送であることが示されたことから、内側血液網膜関門および外側血液網膜関門を介したMPP+エフラックス機構は担体介在性であることが示唆された。さらに、これらモデル細胞を用いたin vitro輸送解析の結果は、MPP+エフラックス機構の分子実体が未知のトランスポーター分子であることを支持するものであった。
|
今後の研究の推進方策 |
内側および外側血液網膜関門におけるMPP+エフラックス機構に関しては、さらに詳細な機能特性解析を実施し、その分子実体の同定につなげてゆく予定である。また、研究目的の「①新規薬物輸送機構と機能特性」に関しては、他のカチオン性化合物に関しても実施してゆく予定である。以上に加え、研究目的の「②分子的実体」および「③個体での役割」に関する解析を開始する。具体的には、エフラックス機構の分子的実体を同定する目的で、アフリカツメガエルやHEK293細胞における遺伝子発現解析およびとモデル細胞系におけるノックダウン解析を実施する。
|