研究課題
非小細胞肺癌治療薬afatinibを服用する多くの患者で下痢などの副作用による投与量の減量が余儀なくされている。投与初期より患者毎に投与量を調整して副作用をコントロールできれば、患者のQOLの改善のみならず、投与可能期間の延長により生命予後の更なる改善も期待できる。そのためには、afatinibによる副作用発現の個人差の原因を解明することが重要である。本研究では、afatinib投与患者における薬物体内動態を解析し、afatinib血漿中濃度と副作用重症度および動態関連遺伝子多型を解析することで、個別化薬物療法のためのエビデンス構築を目的とした。さらに、中枢への転移を認める患者の脳脊髄液中の薬物濃度を測定することで薬剤の脳移行性と治療効果について検討を行った。投与9日目のafatinib血漿中濃度と下痢最悪グレードとの間で正の相関が認められた。また、Afatinib血漿中濃度と体内動態に関連する遺伝子の一塩基多型との関連を調査した結果、ABCG2 C421AのAアレルを持つ患者では持たない患者に比べてafatinib血漿中濃度が有意に高かった。さらに、癌性髄膜炎を併発した患者について、afatinib血漿中濃度および髄液中濃度と予後についての検討を行った。Afatinibの髄液移行率が高い患者では、予後も良好であったが、髄液移行率の低い患者においては、予後不良で積極的な薬物治療は断念せざるを得なかった。中枢移行率の個人差の原因解明には更なる研究が必要と考えられる。
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Lung Cancer
巻: 134 ページ: 1-6
https://doi.org/10.1016/j.lungcan.2019.05.013