研究実績の概要 |
「A New Drug War」(Science 347 469-473, 2015)の中で、合成カンナビノイド(Synthetic cannabinoids, SCs)を筆頭とする危険ドラッグ対する警鐘が鳴らされる中、本邦でもSCsの使用が蔓延した。現下は包括指定による規制が奏功し、流行は下火となったもの今後の流行に備え、その検出技術を開発することは急務である。そこで本研究では、4つの構造部位からなるSCsの誘導体を合成、それらを用いた位置異性体を含む極めて類似したSCsおよび生体内で産生される代謝物の識別をLC-MS/MSを用いて行う技術を確立することを試みると共にSCsの生体内挙動を確認するための動物実験を行い、摂取証明に寄与するデータの取得を試みた。 その結果、SCsの一つであるFUB-JWH-018の位置異性体をESI-QqQ MS(Forensic Chem. 13 100157, 2019)、ESI-IT-TOF-MS (Forensic Toxicol. 37 113-120, 2019), GC-EI-MS-MS (Forensic Chemistry, 6: 28-35, 2018)で識別できることを明らかにした。 さらに、SCsとその代謝物の異性体のヒト肝ミクロソームでの代謝挙動をLC-MS-IT-TOFを用いて確認できることを明らかにした (Forensic Toxicol., in press)。 さらに、動物実験では当初予定していた尿中代謝物の検出が極めて困難であったものの胆汁排泄が主要なSCsおよびその代謝物の排泄経路であることを明らかにし、現在はその詳細な排泄機構についての確認を行っている。 以上、本助成を受けた研究により、SCsの摂取証明の端緒となる結果が得られたこととなり、今後のさらなる研究の進展が大いに期待される。
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