研究課題/領域番号 |
17K08419
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
佐々木 崇光 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (20382674)
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研究分担者 |
吉成 浩一 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (60343399)
永田 清 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (80189133)
保坂 卓臣 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30611579)
志津 怜太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (50803912)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬剤性肝障害 / DILI / インビトロDILI 評価系 / cytochrome P450 |
研究実績の概要 |
本年度は、薬剤性肝障害誘発性薬物(DILI薬物)及びDILI誘発性がない薬物(no-DILI薬物)の選定、そしてこれらの化学構造的特徴及び生物学的反応性によるクラス分けに重点を置き、本研究を遂行した。 DILI薬物及びno-DILI薬物は、文献情報等に基づき、それぞれ432物質と217物質を選定した。両薬物間の構造的違いを明らかにするため、分子記述子を算出し、2群間の比較を行ったところ、760種類の記述子において有意な差が認められた。これらを決定木やランダムフォレスト等の統計学的手法により解析した結果、DILI薬物及びno-DILI薬物の判別に有用な記述子を複数個同定することができた。 また、多種多様な化学物質を認識するcytochrome P450(P450)の性質を利用し、P450阻害活性が生物学的な反応性の指標として有用であるか明らかにするため、DILI薬物95物質及びno-DILI薬物75物質について、9分子種のヒトP450に対するスクリーニング試験(P450反応性評価)を実施した。その結果、5分子種において、DILI薬物の方がP450反応性が有意に高いことが明らかとなり、DILI薬物及びno-DILI薬物の判別の指標として有用であることが示唆された。その一方で、P450反応性を有さないDILI薬物、あるいはP450反応性を有するno-DILI薬物も確認されたことから、P450反応性評価に加えて、P450とは異なる化学物質認識性を有するタンパク質との反応性あるいは毒性学的観点からの評価も必要であると考えられた。 個人差反映型細胞については、申請者が樹立した5分子種のP450発現アデノウイルスをHepG2細胞に同時感染させ、ヒト凍結肝細胞と同レベルの活性パターンを有するAd-P450細胞を利用し、CYP3A4の発現量を変動させた改良型Ad-P450細胞を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、DILI薬物及びno-DILI薬物の選定、分子記述子及びP450反応性を利用した化学構造と生物学的反応性によるDILI薬物及びno-DILI薬物の判別を研究計画通りに遂行した。 選定した薬物に関しては、より明確なDILI薬物及びno-DILI薬物の判別やDILI薬物のクラス分けを行うことを目的に、化学構造解析に加え、投与方法・量、投与期間、代謝経路、薬効分類等の医薬品情報の調査を開始した。また、P450反応性評価についても、170物質の評価を完了していることから、概ね順調に成果を得ることができている。さらに、薬物の生物学的反応性の評価については、DILIの毒性学的観点からのアプローチとして、炎症や酸化ストレスに対する応答因子への影響についても確認するため、ターゲット因子の選定や評価手法の条件検討を行った。 個人差反映型細胞は、研究計画に従って分担研究者と連携し、発現量に起因したCYP3A4の個人差を模倣した細胞の作製を行い、その薬物代謝活性の測定を行った。 以上のことから、本研究は順調に遂行しており、得られた成果に基づいた新たなアプローチも既に着手していることから、進捗状況は良好であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、DILI薬物及びno-DILI薬物の分子記述子及びP450反応性を利用した化学構造と生物学的反応性によるDILI薬物及びno-DILI薬物の判別やDILI薬物のクラス分け、そして個人差反映型細胞の作製を継続して進める。 DILI薬物及びno-DILI薬物の医薬品情報については、KEGG、Drug bank、PMDA、ATC/DDD等のデータベースを用いて調査を行い、DILI薬物及びno-DILI薬物の判別やクラス分けに利用する。生物学的反応性については、P450反応性に加え、炎症や酸化ストレスに対する応答因子への影響評価をレポーターアッセイやハイコンテントイメージング等により実施する。これらの評価系においては、HepG2細胞に加え、薬物代謝を考慮する観点からHepaRG細胞を用いる。また、作製した個人差反映型細胞を用いて、薬物代謝酵素活性の個人差がDILI薬物の毒性発現に与える影響を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DILI薬物及びno-DILI薬物のヒトP450に対する反応性評価において、関連試薬のスケールダウンを行ったため、当初予定していた予算額と実際の使用額に差額が生じた。次年度以降においても、多数の薬物を対象とした反応性評価を実施するため、生じた差額分については、その評価のために使用する。
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