研究実績の概要 |
既存のSSRI, SNRI, NaSSAによる薬物治療に効果を示さない単極性うつ病患者には、新たな選択肢として炭酸リチウムや非定型抗精神薬を併用した抗うつ薬増強療法が施行される。抗うつ薬増強療法では、抗うつ薬、炭酸リチウムや非定型抗精神薬の服用量が患者個々で異なるため、それぞれの薬物血中濃度の治療効果への影響を検討する必要があるが、これまでに各薬物血中濃度を包括的に検討した報告はない。加えて抗うつ薬増強療法の治療効果には遺伝的因子による影響が示唆されるが、詳細には検討されていない。そこで、本応募研究課題では、性別・家族歴などの患者背景、各薬物血中濃度、遺伝的因子の抗うつ薬増強療法の治療効果への影響について検討する。本応募研究課題により得られた知見を臨床現場に提供することで、難治性うつ病患者における抗うつ薬増強療法の個別化医療への臨床応用が可能となり、臨床上、有益となる。本年度は、研究への同意を得た60名の患者について、大うつ病の診断基準を基にしてスコア化した評価尺度(不眠、興味の減退、罪責感、気力の減退、集中力の減退、食欲減退、体重減少、精神運動性の焦燥・制止、自殺念慮、自殺企図、抑うつ気分の各項目についての頻度を基にスコア化したもの)の聴取、診療録等の調査、また遺伝子多型解析(モノアミントランスポーター、ABCトランスポーター)を行った。遺伝子多型解析により得られた各遺伝子型分布はこれまでに報告されていた日本人での遺伝子型分布と同様であった。
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