研究実績の概要 |
既存のSSRI, SNRI, NaSSAによる薬物治療に効果を示さない単極性うつ病患者には、新たな選択肢として炭酸リチウムやオランザピン、アリピプラゾールなどの非定型抗精神薬を併用した抗うつ薬増強療法が施行される。抗うつ薬増強療法では、抗うつ薬、炭酸リチウムや非定型抗精神薬の服用量が患者個々で異なるため、それぞれの薬物の治療効果を包括的に検討する必要がある。加えて抗うつ薬増強療法の治療効果には遺伝的因子による影響が示唆されるが、詳細には検討されていない。本研究課題では、性別・家族歴などの患者背景、併用薬、遺伝的因子の抗うつ薬増強療法の治療効果への影響について検討する。本年度は、昨年度に引き続き患者検体収集を行い、同意を得た患者は計80名となった。さらに各患者から大うつ病の診断基準を基にしてスコア化した評価尺度(不眠、興味の減退、罪責感、気力の減退、集中力の減退、食欲減退、体重減少、精神運動性の焦燥・制止、自殺念慮、自殺企図、抑うつ気分の各項目についての頻度を基にスコア化したもの)を用いて、各うつ症状の聴取、診療録等の調査を行った。遺伝子多型解析に関しては、新たに神経可塑性に関わる因子(脳由来神経栄養因子(BDNF)、cAMP response element binding protein 1(CREB1)など)、モノアミン受容体(ドパミン受容体、セロトニン受容体など)、について解析した。遺伝子多型解析により得られた各遺伝子型分布はこれまでに報告されていた日本人での遺伝子型分布と同様であった。
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