研究実績の概要 |
既存のSSRI, SNRI, NaSSAによる薬物治療に効果を示さない単極性うつ病患者には、新たな選択肢として炭酸リチウムやオランザピン、アリピプラゾールなどの非定型抗精神薬を併用した抗うつ薬増強療法が施行される。抗うつ薬増強療法では、抗うつ薬、炭酸リチウムや非定型抗精神薬の服用量が患者個々で異なるため、それぞれの薬物の治療効果を包括的に検討する必要がある。加えて抗うつ薬増強療法の治療効果には遺伝的因子による影響が示唆されるが、詳細には検討されていない。本研究課題では、性別・家族歴などの患者背景、併用薬、遺伝的因子の抗うつ薬増強療法の治療効果への影響について検討する。本年度は、同意が得られた患者163名(抗うつ薬治療群108名、抗うつ薬増強療法群55名)を対象に、治療効果、副作用発現に関わる因子について検討した。抗うつ薬治療群、抗うつ薬増強療法群において、うつ症状スコアの変化、および薬剤変更、追加により、効果が見られなかった患者は抗うつ薬治療群30名、抗うつ薬増強療法群3名であった。治療効果に関わる因子について抗うつ薬治療群において検討したところ、非応答群では、CREB1 rs4675690遺伝子多型においてTアレル頻度が高い傾向が見られた。また、副作用が認められた患者は、抗うつ薬治療群21名、抗うつ薬増強療法群38名であり、抗うつ薬治療群に比べ、抗うつ薬増強療法群で副作用の発現頻度が高かった。集中力低下、めまい、吐き気、口渇の4つの副作用発現に関わる因子について検討したところ、抗うつ薬増強療法群において、集中力低下と5HT2A rs6311、およびARRB2 rs1045280遺伝子多型との間に関連がある可能性が示唆された。
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